ワークスペース進化論

徹底討論 3.11を境に変わりつつある情シス部門の役割

五味明子 怒賀新也 (編集部) 2012年07月05日 09時00分

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 日本中を文字通り震撼させた東日本大震災、あの「3.11」から1年以上が過ぎた。以来、日本企業は危機管理に対する考え方を大きく変えたと言われている。加えて、回復の兆しが見えない経済情勢、迷走する政局、アジアの成長をビジネスとして受け止めるべく加速するグローバルビジネスというトレンドが相まって、いま、日本人ひとりひとりが、自身の働き方を改めて見つめ直す時を迎えている。従来と比較して、さまざまな局面が変化してきているのだ。

被災した今年3月ころの仙台空港そばの海岸
住居が跡形もなく流された仙台空港そばの海岸付近

 特に、企業活動を支えるITの世界はここ1年で大きく変わった。何よりエポックメイキングだったのは、コンシューマー技術がエンタープライズに大きく影響を及ぼすようになったこと。スマートフォンやタブレットに代表されるモバイルデバイス、手元にアプリケーションやデータを持たずインターネットの向こう側にあるリソースを利用するクラウドコンピューティング、24時間365日にわたって人々をつなぐソーシャルメディア、いずれもコンシューマーの世界で発達してきた技術が、いまエンタープライズの世界に浸透し始めている。

 きっかけの1つして3.11を挙げる声が多い。TwitterやGmail、モバイルネットワークが活躍したあの日を境に、エンタープライズのコンシューマライゼーションは加速した。

 本特集では、3.11以降、日本人にとっての最適なワークスペースの在り方を、企業ITという切り口から4人の識者によるディスカッションを通じて検証したい。ディスカッションの参加者は以下の通り。1回目は企業ITを司る「情シスの役割」の変化について議論する。

  • NTTコミュニケーションズ 先端IPアーキテクチャセンタ 担当部長 山下達也氏
  • セールスフォース・ドットコム アライアンス本部 ISVアライアンス部 シニアディレクター 御代茂樹氏
  • グーグル エンタープライズ部門 シニアプロダクトマーケティングマネジャー 藤井彰人氏
  • (モデレータ)日本技芸 代表取締役社長 御手洗大祐氏
「すべてが急に変わったわけではないが、着実な変化があった」などそれぞれの立場から意見が飛び出し議論は白熱した
「すべてが急に変わったわけではないが、着実な変化があった」など議論は白熱した

御手洗 3.11以降、BCPの観点からも企業ITにおけるクラウドやモバイルの重要性がクローズアップされています。皆さんはIT業界をリードする企業に勤務していますが、そういった会社にあっても目に見える変化はあったのでしょうか。

藤井 グーグルはもともと社員がどこにいてもコラボレーションを進め、生産効率を高める姿勢が強い会社ということもあり、3.11から急激に変わったという印象はありません。ただ、その方向性がより明確になったことは確かです。例えば、Googleカレンダーをシェアして会議室を予約するシステムがあるのですが、1時間の会議を設定すると他部署から「長い!」と文句を言われることがあります(笑)。事前にソーシャルメディアや電話会議でコラボレーションを進めておけば、30分で十分だろうと。

グーグル エンタープライズ部門 シニアプロダクトマーケティングマネジャー 藤井彰人氏
グーグル エンタープライズ部門 シニアプロダクトマーケティングマネジャー 藤井彰人氏

山下 NTTの場合は社員が震災で自信をつけた部分は少なからずあります。あの非常事態にあって「我々はインフラをつなぎ続けなくてはいけないんだ」という使命を実感した若い社員は多い。「インフラ屋」の役割を再認識したとも言えます。これまで保守部門の仕事は嫌がられる傾向にあったのですが、風向きが変わってきました。

もう1つ、インターネットのインフラ屋にとって大きかったのは、あの地震の直後、CDN(コンテンツデリバリネットワーク)業者が連携してインターネットをつなぎ続けたこと。それまでのインターネットはISPやDNSの連携が支えていたと言ってもいい。それが3.11ではCDNが連携し、結果としてクラウドの連携を加速した。

御代 私はあの日、GmailやTwitterを使いながら家族の安否を確認していましたが、使いながら「オンライン=生命線」であると強く実感しました。3.11は「持たないサービス」の価値をものすごく高めたと思います。あのような災害時にあって、手元になくても動くものは動くという事実が、インフラのあり方に対する意識を大きく変えたのではないでしょうか。

藤井 正直、コンシューマーのツールがこれほど役に立つのか、という驚きはありました。GmailもTwitterもコンシューマーでの利用にフォーカスが当てられがちでしたが、3.11で業務でも使えることを証明したといえますね。

山下 大企業の意識も相当変わってきています。特に、トップレベルがクラウドへの関心を強く示すようになってきた。クラウドはコスト削減の代名詞のように言われることもありますが、本当にコストダウンを図るなら、これまで企業の「聖域」とされていた部分にメスを入れる必要がある。決断ができるのはトップだけ。持たないITの流れが進めば、情シスの仕事も大きく変わるでしょう。

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