「テクノロジ・カンパニー」へと原点回帰を進めるHP

冨田秀継 (編集部)

2012-10-11 14:54

 日本ヒューレット・パッカード(HP)が10月9日に開催した「HP Converged Cloud Summit」で、同社代表取締役 社長執行役員の小出伸一氏がクラウドコンピューティングに対する取り組みを説明した。

 HPは今、自社の原点である「テクノロジ・カンパニー」へと回帰しようとしている。同社の創業は1939年。William HewlettとDave Packardの両氏によって米カリフォルニア州パロアルトに設立された。多様性の尊重や起業家精神に富んだ気風など、現在にも受け継がれるシリコンバレー文化の源流を作り出した古豪で、大手IT企業もその幼年時代には陰に陽にHPの影響下にあったといっていい。

 多くの読者がよく知るとおり、そのHPが今、自社改革に苦しんでいる。

 HPの課題は明確だ。「CEOが代わりすぎる」——この一点に尽きるといえよう。CEOの頻繁な交代は一貫性のない経営戦略をもたらすからだ。

 現在の社長 兼 CEOのMeg Whitman氏は米国時間10月3日、投資家向けの説明会でHPのビジネス上の課題を解決する「特効薬」はないと説明。5年に渡る計画的な改革が必要だとの認識を示し、アナリストに理解を求めた(今年はその2年目にあたる)。しかし、2013会計年度の業績見通しが奮わないことが明らかにもなり、その日同社の株価は13%も下落、9年ぶりの安値をつけた。

 前週のこうした動きを受け、小出氏は最初に1枚のスライドを提示した。

 これを読むと、HPはコア事業を「インフラ」、つまりハードウェアと認識していることが分かる。パソコンなどのパーソナルシステムと、印刷機器のイメージング&プリンティング、そしてサーバやネットワーク機器の3つの領域だ。

 HPは10年以上にわたって、パーソナルシステムとイメージング&プリンティングの統合と分離を繰り返してきた。頻繁なCEOの交代による一貫性のない経営戦略が、コア領域での再三の組織再編という形で現れ、それが経営の混迷につながっていると見る向きも多い。このスライドでは、改めて両者が別のコア領域であることを示した格好になる。

小出伸一氏
小出伸一氏

 このハードウェアの上にソフトウェア事業を載せてコア事業を拡大し、さらにハードウェアとソフトウェアを組み合わせて価値を増大させるのがサービス事業。そして、各業種の顧客に提供する価値を最大化するのが業種別ソリューションという流れになる。

 小出氏は、「HPはこれらを1社で、フルポートフォリオでお客様に提供できる唯一の企業だ」と胸を張る。

クラウドに統一アーキテクチャを

 クラウドコンピューティングについては、同社のビジョン「Converged Cloud」が説明された。

 「お客様を訪問したときのテーマは、約50%がクラウドに関するもの」と言う小出氏は、「日本でも空中戦から地上戦のクラウドにきた」と実感しているという。一方、約70%の顧客はクラウドのメリットを理解しているが、そのうちのさらに70%がクラウドのリスクを懸念しているのも実感だそうだ。

 クラウドのリスクには、よく言われる情報セキュリティ、法規制に対応するためのコンプライアンス、そして統一されたアーキテクチャが存在していないが故のベンダーロックインの懸念などが挙げられた。

 しかし、IT部門がクラウドの活用に二の足を踏んでいる間に、事業部門がクラウドを独自に利用するケースも増加している。IT部門が認識していないクラウドサービス、いわゆる「野良クラウド」が企業内に散在し、今後「サイロクラウド」として問題化していく可能性があるという。

「サーバでも同じこと(サイロ化)が起こったが、クラウドでも同様のことが起こるというのがユーザーの心配だ。ガバナンスを効かせにくいという声も実際に出てきている」(小出氏)

 Converged Cloudというビジョンは、サイロ化=分散化の正反対の意味だ。小出氏は「クラウドは、アーキテクチャ、テクノロジ、セキュリティ、サービスレベルがバラバラだ。Converged Cloudはそれを統一する。お客様が本来目的としていたクラウドに近づけようというのがConverged Cloudの目的だ」と強調する。

 日本HP 執行役員 チーフ・テクノロジー・オフィサーの山口浩直氏は、既存のレガシーのバラバラな環境を、統一されたアーキテクチャで相互に運用していくというのがConverged Cloudだと説明。小出氏も「プライベートクラウドの支援、マネージドクラウド、そしてパブリッククラウドも米国では発表している。クラウドのすべてのポートフォリオを持っているのが特長だ」と語る。

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