体験志向が製品に命を吹き込む--ダッソー幹部

沙倉芽生 2012年11月26日 14時06分

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 先週、ベルギーのブリュッセルでDassault Systèmesが開催した「3DEXPERIENCE Forum Europe」で、Dassaultは単なるPLM(製品ライフサイクル管理)ではなく、製品が付加価値を生み出すようになるプロセスに着目した「3Dエクスペリエンス」という考え方を企業理念として繰り返し強調した。

 この3Dエクスペリエンスとは具体的に何か。Dassault Systèmesでデザインエクスペリエンス担当バイスプレジデントを務めるAnne Asensio氏に、その意味を聞いた。

--基調講演でDassault Systèmes プレジデント 兼 最高経営責任者のBernard Charles氏が強調していたように、エクスペリエンスの重要性は分かりました。ここで、3Dと組み合わせた「3Dエクスペリエンス」の意図を具体的に教えてください。

Dassault Systèmesでデザインエクスペリエンス担当バイスプレジデントを務めるAnne Asensio氏
Dassault Systèmesでデザインエクスペリエンス担当バイスプレジデントを務めるAnne Asensio氏

 まず、エクスペリエンスという言葉について理解してほしいことがある。米国ではエクスペリエンスという言葉をマーケティングの意味合いで使うことも多いが、われわれが言うエクスペリエンスは、人や生活そのものを指している。つまり、個人の人格を形成してきたすべての相互作用がエクスペリエンスなのだ。

 これまで仮想環境を利用するものづくりにおいて、製品は単に静的な「モノ」として存在せざるをえなかった。つまり、製品に命がなかったのだ。われわれは製品に命を吹き込むために拡張機能を使い、エクスペリエンスを作り出す。

--3Dエクスペリエンスを実現するために何が必要ですか?

 われわれは今、10~20年前にはなかった科学的な能力を持っている。シミュレーションやビジュアライゼーション技術が一例だ。こうした科学的な技術を使うことにより、現実世界の出来事を仮想的に再現できる。

 しかし、技術だけでは現実的な意味で3Dエクスペリエンスを生み出せない。体験者によって置かれている環境が違うからだ。それぞれの体験が人格の形成に結びつくことと同様に、独自のエクスペリエンスが存在する。同じ映画を見ても人によって違った感想を持つのと似ている。

 エクスペリエンスの元となる要素は様々だ。出身地や文化、信念などによっても異なるだろうし、機嫌の良い時と悪い時でも変わる。エクスペリエンスを現実の世界に近づけるには、様々な知性が必要だ。壮大な話だがすべての要素を統合できなければ3Dエクスペリエンスとは呼べない。

--具体的に何ができるようになるでしょう?

 従来の3D技術でも仮想的に製品を設計できた。さらに3Dエクスペリエンスでは、人々が求める体験を設計し、仮想的な世界でその体験を再現することを目標としている。自動車の形状を3D技術で仮想的に設計していたように、例えば「ブレーキをかけると何が起きるか」を3Dエクスペリエンスで再現するといった具合だ。

 自然環境保護のために3Dエクスペリエンスを活用することもできる。例えば、気象変動の3Dエクスペリエンスを作り出すために「ブラジルの森の木を全部切り倒したら気候がどう変動するか」をシミュレーションできる。その結果は、環境保護のために何らかの決断をする際に十分な裏づけデータになるだろう。

 このような3Dエクスペリエンスを実現するには、仮想的な世界を継続的に拡張し、現実の世界により近づけていく必要がある。しかし現実世界のエクスペリエンスは複雑であるため、3Dエクスペリエンスを実現するまでの道のりは平坦でない。

--3Dエクスペリエンスを実現した事例があれば教えてください。

 フランスの建築会社Eiffageの話をしましょう。ある時、Eiffageの環境持続設計チームから「環境を壊すことなく街を維持する方法はないだろうか」と相談された。われわれは、設計の方法論に基づき、関係者全員を議論の場に集めた。建築家や市の職員、政治家、環境に優しいビルを建設するイノベーターなど、様々な立場の人たちだ。2030年のこの街の姿を考え、解決策を出し合い、シナリオを策定した。

 概念的な内容だったが、われわれはこの概念を実験するところまでこぎつけた。仮想的な設計をし、シミュレーションによってシナリオの良否を調べた上で環境持続性を提示したのだ。

 街の設計は考慮するポイントが多岐にわたる。インフラ、ビル、自動車、歩行者のことまで考える必要があるのだ。通常、建築家は建築のことだけを考えるが、それでは各解決策が連動せず全体として機能しない。

 3Dエクスペリエンスでは、設計プロセスを共同作業と見なす。ビルや駐車場などの街の要素と街全体が、新しいレイアウトではどう見えるのか。具体的なシナリオを提供するには、公共交通機関や自家用車などの動いている人やモノの存在も考えなくてはならない。全要素が重なり合って初めて3Dエクスペリエンスが生まれる。今、世の中で下されている多くの決断は、3Dエクスペリエンスが考慮されていない。それは間違いだと私は考えている。

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