セールスフォース・ドットコムが12月6日に東京ビッグサイトで開催したイベント「Cloudforce Japan」に、トヨタ自動車の豊田章男社長が特別セッションのゲストスピーカーとして登壇した。Salesforceのマーク・ベニオフCEOと、もう1人のゲストとして登場したコリン・パウエル元国務長官の3人が、ITの観点から世界経済など議論した。豊田章男氏は、自動車の品質問題で米公聴会に呼ばれた際のエピソードを交えながら、セッションを盛り上げた。
リーダーのあるべき姿について意見を求められた豊田氏は、リーダーとして重要なこととして“決めること”と“責任を取ること”の2つを挙げた。
社長になってからの3年ほどを振り返り、決して順調ではなかったと豊田氏は話す。社長就任後まもなく、リコール問題で米公聴会で謝罪した。業績も悪化しており「トヨタは危ないのではないか」という声を耳にすることも少なくなかったという。
「社長というよりは(謝罪をしてばかりという意味で)“謝長”といった方がいいかもしれない」(豊田氏)
公聴会に出席するために渡米した時点で、少なくとも社長という役職を追われることは間違いないと思っていたという同氏。だがここで「初めて会社の役に立てると思った」と打ち明ける。
「創業家というレッテルはついてしまうが、しんがり役になれることがうれしかった。しんがりというのは、日本の戦国時代に、戦が劣勢で背走を余儀なくされたとき、味方が無事に安全な場所へと身を移すために、最後尾で相手と戦いながら踏ん張る役目を担う人のことをいいます。とにかく誰のせいにもせず、自分が責任を取る覚悟をしていました」(同氏)
かなり踏み込んだ発言に場内に緊張感が漂う中、「私は意思決定を3秒で下すことがあります。しかし、その意思決定によって影響を受ける人の数が何人いるかを理解していないときは、3秒で決めてはいけないと思っています」とリーダーとしての心得を伝えた。
「これから“謝長”の意味を、感謝してもらえるという意味での“謝長”へと変えていきたい」(豊田氏)
豊田氏のこうした正直な受け応えが心を打ったのか、講演終了時、来場した外国人を中心にスタンディングオベーションが起きた。