本記事では、一従業員が「脅威をもたらす内部関係者」に変ぼうする際の兆候について解説するとともに、そういった脅威を低減するために実施できる各種の統制と監視についての提言をまとめている。
2回にわたる本連載の初回では、内部関係者による脅威を3つのカテゴリ、すなわち創造者による知的財産の窃盗行為と、金銭的要求に迫られた非マネジメント層による詐欺行為、ITアドミニストレーターによる情報リソースに対する破壊行為に大きく分類したうえで考察した。今回は、問題が発生した、あるいは発生しそうな兆候を見抜くために、従業員のどういった振る舞いに目を付けるべきかについて解説する。また、内部関係者によるリスクを軽減するうえでのタイミングと統制についても目を向けている。
兆候
従業員は多大なプレッシャーにさらされたり、マネジメントに不満を抱いたりしている時、無意識のうちにその兆候をあらわにすることが多い。図Aは従業員が悪事に手を染める際に見せがちな兆候を一覧にしたものである。つまり、以下に挙げているような振る舞いが表に出てきた場合、それは従業員の忠誠心が揺らいでいる証なのかもしれない(「従業員の『不良化』を防ぐ」より転載)。
- 酔っ払って職場に現れる
- 机の前で寝ている
- 月曜日や金曜日に、理由もなしに欠勤することが何度もある
- 規則を軽視することが多い
- 薬物を乱用している
- いかがわしい行動に他者を参加させようとする
- 同僚やマネージャーに嘘をついたり、ごまかそうとすることが多い
- 自殺や自傷をほのめかしたり、試みたりする
- 不渡り小切手を振り出す
- 養育費の支払いを滞らせる
- セキュリティの統制をかいくぐろうとする
- 昇進できない怒りやうらみを長年抱いている
- セキュリティやビジネスプロセスに対して重大な懸念があり、それをマネジメントに訴えるものの、耳を傾けてもらえないことに不満を抱いている
<図A>性格的な問題が積み重なると、、、
不注意+無精+無責任+欲張り+自己中心的+欺まん的+不誠実+評判の悪さ+態度の悪さ+その他もろもろ=セキュリティリスク
(「従業員の『不良化』を防ぐ」より転載)
従業員は、マネージャーの見ているところでは行儀良く振る舞う場合も多い。このため同僚を活用して、問題のある従業員を洗い出すという手が有効となる。つまり、すべての従業員に対して、不満の兆候を見つけ出すための方法を伝授するわけだ。また、「かかわり合いになりたくない」あるいは告げ口屋と思われたくないという、多くの従業員が抱える懸念を取り除くために、問題のある同僚について匿名でマネジメントに報告できる仕組みを用意しておくのが最善の方法となる場合も多い。