最高マーケティング責任者(CMO)のKaren Quintos氏
--(取材後、米国時間9月12日の株式総会で承認済み)非公開化に向けてステップを進めています。非公開企業となることでマーケティングの面ではどのような変化があるのでしょうか?
大きな変更はない。これまでの投資の方向性を継続する。つまり、サービスや製品でフォーカスしている分野への投資、途上国を含む主要市場の投資を継続する。Dellは現在、4つの事業分野を持つがこれを市場に的確に伝え、顧客に理解してもらうことが大切だ。
--総合ITベンダーを目指しているが、DellはPCベンダーというイメージが根強い。ポストPC時代といわれるが、どうやって認識を変えていくのでしょうか?
PC、サーバ、ストレージで構築してきたビジネスの土台を活用する。この土台の上に、拡張性があり統合されたサービスを構築する。デバイスとクラウドやデータセンターと結びつけるのがDellの戦略だ。このように包括的なソリューションを持つベンダーはないはずだ。
ブランド認識は一夜にして変わるものではない。複数年を要するもので、マーケティング活動も複数年かけて展開する。主要市場で定期的にアンケート調査を行っているが、エンタープライズベンダーとしての認知度は前年比30〜35%改善している。特に、米国、中国、ブラジル、ロシアなどでエンタープライズでのDellの知名度が高まっていることを実感している。
--具体的にどのようなマーケティング活動を行っていますか?
イベント、ソーシャルメディア、広告などさまざまだが、一貫性が大切だ。顧客が関心を持っている文脈からDellのソリューションを説明するようにしている。今回のイベントでは、コネクト、インフォーム、プロテクト、トランスフォームの4つのキーワードを打ち出し、顧客の証言を加えた。
一貫性が1つ目とすると、2つ目は事実を伝えること。導入事例など顧客数、市場における地位を示す数字などをきちんと伝えると、われわれのメッセージは市場で増幅される。
3つ目は、メッセージの統合。印刷物、TVなどの広告、ソーシャルメディアなどのマーケティング活動に統合していく。このメッセージを顧客がDellブランドと接するポイントで営業部隊が伝えることで、効果が増大する。
新しい取り組みとしては、ゲーミフィケーションを利用してエンゲージを強化している。中国市場ではローカルのソーシャルメディアを活用するというアプローチがうまくいっており、フォロワーを増やしている。日本ではBtoBではイベントを重視しており、ウェブコンテンツの拡充も力を入れている。
--ソーシャルメディアの比率は現在どのぐらいで、今後どの程度拡大する予定ですか。
ソーシャルメディアというより、デジタル全体で考えている。デジタル上の活動を抜きにしてソーシャルメディアだけに投資することは意味をなさない。たとえばコンテンツは今後も重要な役割を果たすだろう。顧客のいる場所に適切なコンテンツを提供し、対話を促進していきたい。
ソーシャルメディア、電子メール、コンテンツなどを含むデジタル分野への投資は、この一年で倍増した。最大50%を充てている。モバイルも重要だ。次の世代は、製品やサービスに関する情報をモバイル端末で消費するようになるだろう。
--ITのコンシューマー化により、Appleなどコンシューマーブランドの影響がエンタープライズでも強くなっています。Dellのポジションは。
コンシューマーとエンタープライズの境界があいまいになっているのは、事実だ。マーケティング側でも重要なトレンドだ。
製品側とマーケティングの両方で取り組んでいる。製品側では、エンドユーザーコンピューティング部門が設計・開発している(PCやタブレットなどの)製品は、コンシューマー全体にアピールできるものになっている。
同時に、ビジネスで利用できるようにセキュリティ、管理機能などを最初から備えている。もちろん、Dellのサポートとサービスを受けられる。ウルトラブックの「XPS 13」は、ビジネスでもプライベートでも使える製品として好例だ。BYODでは、DellのPCやタブレットだけでなく、iPhone、Androidなどを管理できる「Dell Mobility Solution」をローンチした。
マーケティング側では、デジタルはもちろん、広告キャンペーンの展開も大切だ。空を飛びたいと思っている“アニー”という女の子が、空を飛ぶ自分のビデオを作るというキャンペーン(「Annie – the girl who could fly」)が、先にTEDの価値ある広告トップ10に選ばれた。このようにコンシューマーの世界へのメッセージも強化しており、相乗効果を出すことだろう。
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