アドビ システムズは11月19日、日本とアジア太平洋地域(APAC)の308人のマーケティング部意志決定権者に対して実施した、デジタルマーケティングに関する実態調査の結果を発表した。デジタル活用度の調査項目すべてにおいてアジア太平洋地域(APAC)の平均を下回るなど、デジタルマーケティングに関しての取り組みの遅れが目立つ結果が出た。
調査実施項目である「意識」「活用状況」「組織体制」「スキル」の4カテゴリすべてにおいて、日本はAPAC平均値を下回る結果が出たという。
結果は以下の通り(日本 ⁄ APAC平均、単位:ポイント)。
- 「MINDSET(意識)」 5.7 ⁄ 6.9
- 「MARKETING READINESS(活用状況)」 4.3 ⁄ 4.9
- 「ORGANIZATIONAL ALIGNMENT(組織体制)」 1.7 ⁄ 3.2
- 「MARKETING SKILLS(スキル)」 0.7 ⁄ 1.6
調査によると日本のマーケティング責任者は他のアジア諸国と同様、「デジタルマーケティングは自社の競争力を高めるものである」(日本91%、 APAC平均94%)と、その価値を高く認識している一方、「経営層に、デジタルマーケティングを推進するリーダー役がいるか」という設問において、日本を除くAPAC平均では「いる」が38%に対し、日本は0%など実際の権限が与えられていないという結果だった。
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アドビシステムズ デジタルマーケティングスペシャリスト 井上 慎也氏
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デロイト トーマツ コンサルティング パートナー 井島 裕昭氏
マーケティング本部本部長の福井恵氏は、日本には経営層にデジタルマーケティングの理解者が少ないというデータを引き合いに、日本の場合、現場レベルの活動だけで経営層やマネージャーレベルを含めたデジタルマーケティングの戦略策定、リソース確保を含めた取り組みが困難であると指摘。「マーケティングに関して欧米はアジアよりも先にいくという認識。アジアより低い結果となった日本のデジタルマーケティングに貢献したい」とコメントした。
続いてデロイト トーマツ コンサルティングの井島裕昭氏とデジタルマーケティングを担っている井上 慎也氏が調査結果についてレビューを実施した。
井島氏はまず普段話している経営者がデジタルマーケティングに懐疑的であるという所感を話した。さらにデジタルマーケの定義があいまいであるとし、「双方向であることこそデジタルマーケティングのあるべき姿だが、ソーシャルメディアを実施しているだけでも十分と考えている人もいるなどなかなか理解してもらえない」とした。
さらに日本の組織は良くも悪くもボトムアップで機能してきた。一方、デジタルマーケティングでは部署間の情報共有がしにくく、横断的な組織が必要と、デジタルマーケティングはボトムアップではなかなか機能しづらい点を強調した。
この点に関し、井島氏は自社のデロイトトーマツを引き合いに出した。デロイトトーマツは世界で20万人の従業員が所属するグローバル企業だが、拠点間でウェブサイトを構築することになった。いままでは自社が提供しているソリューションカットでサイトを作成していたが、顧客志向を中心の作りウェブを変えようという動きがある。その場合、例えば「M&A」という項目は複数の部署が扱うことになり、情報発信や問い合わせの応対をする際、部署間でその案件の取り合いなど混乱が始まってしまう可能性があるのだと解説。
そうした事態を避けるためにもデジタルマーケティング向けの組織に経営トップが介入する必要性や社内の交通整理が必要と説明した。
さらに日本では広告代理店などのパートナーへの満足度が低いという調査結果を紹介。日本の大手広告代理店はメディアの枠を売買する事業がメインであり、デジタルマーケティングの提案は自分自身のクビを締めかねないものであると指摘。現在は経営まで理解できるデジタルマーケティングが理解できるパートナーが必要であるとした。アドビの井上氏もこれに同意し、デジタルマーケティングにはコンサルティングと絡めた提案必要であり、それができる点がアドビの強みとした。