SAP、企業内の全取引データを瞬時に分析、不正を検知する製品を発表

大川淳

2013-12-13 15:13

 SAPジャパンは12月12日、SAP HANA上で動作し、不正行為やその疑いのある要因を検知する新ソフトウェア「SAP Fraud Management」の提供を開始した。SAP Fraud Managementは、ERPをはじめとする大量の業務取引データの中から、設定されたポリシーに基づき不正の恐れのある取引を自動的に発見し、不正リスクを低減させることが可能で不正発覚による企業価値の毀損や株価下落といった事態を防ぐという。

 SAP Fraud Managementは、事前に定義された検知ポリシーに基づきSAP ERPなど大量の取引データの全件を分析、不正の可能性やその兆候のある取引を洗い出し、アラート通知する。不正やそのリスクが発見された場合、発生した位置の地図上表示や時系列のグラフ表示、取引間相関関係のネットワーク表示などが可能となる。

 一連の過程を検証する機能を備えるとともに、それらの調査の作業の流れ、結果をすべて記録し、結果を元にした検知パターンの精度を分析する機能などを持つ。同社では「不正の発見に留まらず、その後の対応や分析まで含めた一貫した不正リスクに対応することができ、不正による財務損失を最少化するほか、再発防止案の策定も支援する」としている。

 同製品はSAP HANA上で動作するため、大量のデータであっても瞬時に処理でき、短時間で不正リスク発見。不正検知ポリシーを定義したテンプレートを用意している。不正検知のポリシーはユーザーが独自に定義でき、企業の状況に応じた最適なポリシーを設定が可能。SAP ERPとの連携機能も要点であり、不正を検知すると後続の支払処理をブロックし、不正を未然に防げる。SAP HANA Enterprise Cloud上でも動作する。


SAPジャパン アナリティクスソリューション本部 シニアソリューションプリンシパル 米国公認会計士 中野浩志氏

 シミュレーション機能も特徴の1つだ。不正検知のポリシーの修正や改善を継続的に実行でき、誤検知数の最少化を図る。また、過去に発生した不正事例ををパターン化し、未来に起こり得る不正を発見するためのコストや労力をかけずに全体的な効率性の向上を目指す。 SAPジャパン アナリティクスソリューション本部に属し、米国公認会計士でもある中野浩志氏は「企業には利益相反取引や保険の不正請求、贈収賄といった取引に起因する、さまざまなリスクが存在しており、売上の5%が不正により消失しているとの指摘もある。2011年の全世界で不正により損失した金額は、3兆5000億ドルに上ると推定されている」と述べ、不正による損失が巨大化していると強調する。


SAPジャパン ビジネスソリューション統括本部 アナリティクスソリューション本部長 中田淳氏

 同社は、新製品の、国内での販売拡大に当たり、不正検査士や不正についてのコンサルタントなど、不正への対応に知見を持つパートナーとの協業を進め、SAP HANA Enterprise Cloudを活用し、SAP Fraud Managementの持つ効果の実現可能性や、価値の実証、製品紹介などに注力していく意向だ。企業の状況に応じ、オンプレミス、クラウド、それぞれを提案する。

 今回の製品は「グローバル展開している製造業、商社、保険業などが主要なターゲット」(SAPジャパン ビジネスソリューション統括本部 アナリティクスソリューション本部長 中田淳氏)としている。「新興国にある日本の製造業拠点などでは、ガバナンスが必ずしも十分でない面がありシステムでのチェックが有効」(中野氏)との考えで、今後1年で30社への販売を目指す。

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