統合基幹業務システム(ERP)パッケージの機能拡張(アドオン)は、企業ごとに必要とされる要件を満たすものだが、総所有コスト(TCO)を招くことにもつながる。ガートナー ジャパンでは、2017年までにERPを利用する日本の大企業の40%以上がアドオンするが、TCOの増大に伴って追加投資の正当化が困難になるという見解を明らかにしている。
同社の最近の調査によれば、ERPの利用機能の50%以上にアドオンを施す大企業の割合は、2009年の2割弱から2013年の3割強へと増加傾向にあるという。今後、同様の傾向が続くと、アドオンの割合が5割を超える企業が増え続け、それらの企業の多くで、不具合発生時の影響分析やテストの工数がふくらみ、パッチ適用やアップグレードの費用が想定を上回ることでTCOが増大し、追加投資が困難になると予測した。
その結果、これらの企業では、時流に沿った新機能や技術の採用に支障をきたし、競争劣位に置かれることが懸念されるという。また、新興技術への取り組みの遅れにとどまらず、ERPの安定稼働に支障をきたす恐れも高まり、他のERPへの乗り換えを検討する企業が増える事態も想定されるという。
ERPの導入や改修、更新を担当するIT部門は、必要とするERP機能が、自社の競争優位に結び付く機能なのか、それとも他社と同様の標準機能で十分と考えられる機能なのか、ユーザー部門と議論し、合意の上で精査する必要があるとガートナーは指摘している。
競争優位に結び付く機能についてはクラウドやモバイルなどの新興テクノロジの活用を検討しつつ、ほかのパッケージやクラウドサービス、自社開発などのERP以外の手段で補完してERPと組み合わせる“割り切り”のある要件整理と、用途の差がはっきりとしたアプリケーションのポートフォリオ管理が重要になるとしている。