もう一度、日本のものづくりに戻ろう--日産GT-R開発した水野氏の講演から

大川淳 2014年03月03日 11時46分

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 東洋ビジネスエンジニアリングは2月12日、東京都渋谷区で、「MCFrame Day 2014」を開催した。統合基幹業務システム(ERP)やサプライチェーン管理(SCM)に関する製品やサービス、最新テクノロジ、成功事例などを、カンファレンスと展示形式で紹介した。基調講演には、元日産GT-R開発責任者である水野和敏氏が登壇、「世界に勝てる日本のものづくりとブランド創造」との表題で、世界的な競争で先行するために必要なプロセスやマネジメントなどをはじめ、自動車開発やレースでの経験談を交え「日本のものづくりの価値」への想いを語った。


元日産GT-R開発責任者 水野和敏氏

最高の仕事は、最少の人、モノ、カネで可能になる

 水野氏は1972年に日産自動車に入社。1980年代は、初代プリメーラやスカイライン、初代セフィーロなどを担当した後、1989年12月、NISMO(Nissan Motorsports International ニッサン モータースポーツ インターナショナル)に出向し、グループCカー耐久レースのチーム監督兼チーフエンジニアに就任した。「レースの監督をやれといわれ、これは左遷なのかと思った。何しろ、当時の日産は負けてばかりだった。しかし、レースとは何か考えてみた。レースは、時間効率だけを追いかけているだけだ。ただ速い車をつくるということではなかった。車そのもの、レース全体の管理、ピットなど、さまざまな要素がある。それらの方法論を考えなければならない。勝っている車をコピーしようとしても勝てない」と、水野氏は振り返る。

 勝つために、水野氏が実行したのは、まったく常識の逆を行くものだった。通常、250人程度の分業による組織で行う車両開発を、NISMOでは、50人のチームが担い、それぞれが開発とレースを兼任した。また、予算などで、親会社からの指示を回避し、完全な自主管理が行えるよう、競合チームに比べて3分の1という低予算とした。予算も人員も徹底多岐に少なくした代わりに、チームの要員に、権利と責任、発言権が与えられた。さらに、4人からなる、データ担当チームが設けられ、レースにかかわる、あらゆるデータを取得し、分析した。それらのデータに即して、車が開発された。「データを調べずにただサーキットに臨んでも、それでは博打のようなものであって勝てない」(水野氏)―このような施策の結果、勝てなかったチームは連戦連勝、遂には92年のデイトナ24時間レースで優勝するまでになる。「最高の仕事は、最小の人、モノ、カネで可能になる」と水野氏は主張する。

世界への提案力があった、80年代の輝きを取り戻そう

 2003年12月、日産自動車のCarlos Ghosn社長は、水野氏をGT-Rのチーフビークルエンジニア(CVE、車両開発主管)兼チーフプロダクトスペシャリスト(CPS、商品企画立案責任者)兼プログラム ダイレクター(PD、収益 販売目標達成責任者)に任命した。その後、水野氏は、国産スーパーカー「GT-R(R35)」を、50人のメンバーとともに3年未満の開発期間で世に出すことに成功した。

 水野氏は最小の資源を用いることで、かえって最高の結果を生み出す方法論を会得していた。それは、レースに勝ち続けたことが証明している。だが、スーパーカー分野で、世界トップブランドの製品を目指していた彼は、それだけでは不十分だと感じていた。そんなとき、チームに示されたキーワードは、正直(事実)と基本(本質)だった。「データ収集と分析は重要だが、単なるデータだけではなく、本質を知ることが必要になる」

 GT-R開発の背景を、水野氏は、こう語る。「1970年代、オイルショックの際に、日本車は実は燃費が良いことが理解され、海外進出が伸びた。そして1980年代、日本は独自の路線を歩んでいた。新しいSUVの先駆けを作ったのは日産やトヨタだった。マルチパーパスカー(多目的自動車)も同様だ。当時、日本の自動車産業は、このように、世界への提案力をもっており、欧米のまねをしない製品を作っていた。では2000年以降どうなっているのか。そこで、もう一度日本のものづくりに戻ろうということで、3年でスーパーカーのトップ級ブランドを作れば信用してもらえるだろうと考えた。(GTRをつくったのは)日本のモノづくりを思い出してもらうためだ」

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