朝日新聞社とマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボは5月12日、「メディアが未来を変えるには~伝える技術、伝わる力」をテーマに東京・六本木の東京ミッドタウンホールでシンポジウムを開催した。
政府がオープンデータなどを進める中、注目されるデータジャーナリズムに焦点を当て、来日した米The Huffington PostやThe New York TimesのパネリストやMITメディアラボ所長の伊藤譲一氏を交えながらメディアの未来を議論した。
スマートデバイスの普及やSNSの台頭で、メディアを巡る環境がここ数年で大きく変わってきている。紙からウェブへ、誰でも発信者といった波が訪れる中で、いわゆる「権力の監視」といった役割を誰が担うのかといった従来型メディアからの問題提起もあり、今後のメディアの在り方について、世界中でさまざまな議論が起きている。
Rivera投手がいかにバッターを抑えているのかをメディア展開した
The New York Times(NYT)のグラフィックエディター、Amanda Cox氏は、データを基に記事を作成するデータジャーナリズムの可能性を指摘。
New York Yankeesのクローザー、Mariano Rivera投手がいかにバッターを抑えているのかを、球種の分析データなどを交えながらビジュアルの要素を交えて細かく読者に伝えたことなどを紹介した。
The Huffington Postのプロダクト部門統括責任者、Nico Pitney氏
The Huffington Postのプロダクト部門統括責任者、Nico Pitney氏はNYTの事例にコメントする形で「言葉を超えたジャーナリズム(Beyond Words Journalism)」との考え方を示し、テキストだけでなく、インフォグラフィックや動画などのビジュアルの要素を使いながら「最も伝わる方法が何か」をHuffington Postの運営で重視していると話した。
また、従来型のメディアが、事件や事故などネガティブな内容を伝えることが多い傾向がある一方、ソーシャルメディアは「ポジティブジャーナリズム」だとも指摘。すばらしい行動などを賛美する「ヒロイズム」のような記事や、「いまうまくいっていること」といった情報を伝えやすい側面があると指摘した。
Pitney氏は、もともとHuffington Postが非常に小さなブログメディアから出発したベンチャー色の強いメディアであるとし、「日本での歴史を持つ朝日新聞ではやりにくいことをできる」とコメント。その意味で、The Huffington Postと朝日新聞社の協業は興味深いとの考えを示した。