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山谷剛史の「中国ビジネス四方山話」

中国が目指す「互聯網+(インターネットプラス)」とは

山谷剛史

2015-03-10 06:00

 年に1度、中国の政策を討論し決定する「両会」が開催されている。両会の1つ、全人代(全国人民代表大会)の開幕式(3月5日)では、李克強首相が政府活動報告を発表するが、李克強首相から「互聯網+(インターネットプラス)」という言葉が出て話題となった。「互聯網+が国家戦略となった」とメディアは分析する。

 李克強首相の発表の前に、中国のインターネット業界を代表する騰訊(Tencent)の最高経営責任者(CEO)である馬化騰氏がこの言葉を提案していた。また3月3日には、騰訊同様中国のインターネット業界を代表する企業の百度のCEO李彦宏氏が、「中国大脳」計画を提案している。

 騰訊の「互聯網+」と百度の「中国大脳」は言葉こそ異なるが、考え方は似ている。クラウドコンピューティングやビッグデータを、今までにインターネットがあまり普及していない業界にも浸透させて、個人や社会を管理し、(中国政府が思う)より良い社会を創ろうというものだ。「中国大脳」と「互聯網+」の違いは、中国大脳は「米国のインターネットの発展がそうであったように、軍によるインターネットの発展をまず優先する」という考え方くらいだろう。軍に働きかける案は良くなかったのかもしれない。

 両社のアイデアとも、医療現場でのネット技術の導入を訴えている。騰訊と百度と、残る中国を代表するインターネット企業の阿里巴巴(Alibaba)は、最近他業種への進出に積極的だ。インターネットでの金融商品や保険商品の購入を可能にし、さらに銀行業にまで参入した。騰訊による銀行「微衆銀行(WeBank)」は、同社のチャットソフトのQQや微信の書き込み記録を与信の判断基準にした。

 医療に関してはネット化が進んでいるとはいえず、しかもこれから高齢化社会を迎えていく中で注目される分野だ。ネット化が進んでいない医療業界にビッグデータを適応すれば、各人の行動記録や状況記録など、より詳細な個人情報が得られる。その一方で、また診察記録がクラウドでシェアされることにより、より的確な医療が行えるなど、人々にとってよりよい効果が期待できるともいえる。騰訊や百度も、医療分野への進出により、ユーザーの囲い込みが行える。

 インターネットを浸透させる主要プレーヤーである、百度、阿里巴巴、騰訊の3社が、あらゆる業界にクラウドコンピューティングを競って導入すれば、これら企業ないしは政府が、6億5000万人程度のインターネットユーザー情報を把握するのはもちろん、近い将来をビッグデータから予想するのは難くない。FacebookとLINEとYahoo! JAPANなど多国籍で様々な企業がインターネットの各サービスでシェア争いをしている日本の状況を顧みると、中国では日本よりもずっと簡単にユーザー情報をまとめられて、さらに深く予想できることは想像できよう。

 閉じたインターネット内の、巨大な数社によるクラウドコンピューティングとビッグデータは、中国で競争他社を生み出さないという点はあるものの、考えようによっては世界で比類なき競争力を持つサービスを生む可能性を秘めてはいないか。

山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター
2002年より中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、アセアンのITや消費トレンドをIT系メディア・経済系メディア・トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に「日本人が知らない中国ネットトレンド2014 」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち 」など。

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