--2015年度はどのように運用を見直しましたか?
まず、デジタル教材の配布方法を、ダウンロードではなく、USBメモリを使った方法に変えました。学校ごとに、教材が入ったUSBメモリを1クラス40人分40本配布して、クラス単位でインストール作業をしています。4月の段階で、教材のインストールは問題なく完了しました。
ただし、いくつかの教科書会社から、教材の容量がそれほど大きくないものについては社の方針としてサーバからダウンロードしてほしいとの要望がありました。そのため、ダウンロードの運用を継続している教材もあります。
また、年度末にアンインストールする運用については、教員や生徒から不満がありました。デジタル教材を1年間使ってみたら、紙の教科書より分かりやすく、検索機能が充実していて便利だった、使い続けたいという声が上がったのです。
教員と生徒の意見を受けて、教育委員会では現在、教科書会社に対して、デジタル教材を「復習教材」として利用する契約ができないかどうか、提案をしています。例えば、高校2年生で使う数学IIのデジタル教材を契約している場合に、前年度に契約していた数学Iのデジタル教材を復習用途で参照することができないか、という提案です。
--5月に発足した文部科学省の「デジタル教科書の位置付けに関する検討会議」の委員も務めています。この会議でどのような提案をしていく予定ですか。
佐賀県での電子黒板やタブレット端末導入で得られた知見を委員会で共有し、著作権法改正の提案や、紙の検定教科書とデジタル教科書の使い分けについて提言していく考えです。
デジタル教科書には、教員が授業で提示するために使う「指導者用デジタル教科書」と、生徒が自分の端末で使う「学習者用デジタル教科書」があります。佐賀県の全教員1万人から上がってきた声として、電子黒板と指導者用デジタル教科書に反対する意見はありません。すぐにでも、全国の学校に導入できると思います。
一方で、学習者用デジタル教科書については、指導者用と同じスピード感で導入を進めることはできないと感じています。デジタル教科書を使った授業は、教員も生徒も慣れるまでの時間が必要です。ある年にいきなり紙をデジタルに変えるようなことは決してしてはならず、デジタルと紙を併用しながら、改善を重ねていくべきだと考えます。
私の意見としては、デジタル教科書は紙の教科書に取って代わるものではなく、将来的にも紙と併用して使うものだと考えています。辞書のように、ピンポイントで情報にアクセスするための用途ならデジタルでもいい。しかし、物事を体系的にとらえるためには、紙の教科書を使った方がよい。やはり、メインは紙の教科書、デジタル教科書は副教材として使うべきだと考えます。
また、著作権法については、授業で教材として使うデジタルコンテンツへの規制を緩やかにしてもらえるよう、これまでも県から政府に提案してきました。著作権法35条の教育機関での著作物複製の特例対象がデジタルコンテンツに拡大すれは、教員が自由にデジタル教材を作成することもできるようになります。