「賢い」統合
オムニチャネルは、アプリケーションやサービス間の境界を超え、統合される範囲を拡大する。企業内の部門や役割について考えるのではなく、これらの境界を超えて体験、文脈、チャネルの特長について考える。
例に挙げた品質検査作業員は、製品のリコールを引き起こすシステム的な欠陥を防ぐ最後の砦かもしれず、この作業員をより大きな製品体験や文脈に組み込む必要がある。この文脈では、この作業員が得た情報は、技術部門に送られる場合もあれば、あるいは注文への対応スケジュールに影響を与える場合には、販売部門にも送られるかもしれない。
この考え方は、従来の組織またはシステムによる「サイロ」を破るもので、はじめは恐ろしく思えるかも知れない。統合は、ITシステム構築の中でも、もっともコストがかかる要素だからだ。しかし、オムニチャネルの考え方はこの面でも役に立つ。技術的に言えば、オムニチャネルはAPI駆動型のアーキテクチャへの移行を後押しする。これは、データや機能をアプリケーション間で共有しやすいためだ。しかし、その長期的なゴールを追い求めて、完璧を求めるあまりにうまくいかないのでは本末転倒になってしまう。長期的なソリューションに取り組んでいる間も、品質に関する問題を指摘する簡単な通知を実現するだけで、今必要とされている行動が行われるようになるかも知れない。望ましいユーザー体験を生み出すためには、機能をベースに設計された数千億ドル規模のIT統合は必要ないかも知れないのだ。
食事療法と運動
体重を落とすためには食事療法と運動が重要だと言われるが、実践できる人は少ない。それと同じように、ユーザーと文脈、チャネルの特長に焦点を合わせ、賢い統合を行えばいいというのは、言うは易く行うは難しだ。しかし、単にユーザーと文脈について考えるようにするだけでも、簡単なテクノロジを利用するようになり、ユーザーを理解するための投資が前もって必要になるものの、最終的にはアプリケーションやITプロセスの合理化につながる。
さらに、多くのマーケティング担当者の多くは、オムニチャネル的な考え方に移行しつつある可能性が高い。IT支出のうち、マーケティングに左右される割合は増え続けており、考え方を同じくしておくことは今後必ず役に立つだろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。