7月29日に「Windows 10」が登場し、現時点で企業の業務用PCのOSとして選択できるWindows OSは「Windows 7」「Windows 8.1」「Windows 10」の3つになった。業務用PCのOSの選択は、IT投資計画など経営的な側面からも重要なファクタとなっており、OSを選択する過程でどのようなポイントで検証を行うかは非常に重要と言える。
Windows OSで提供される機能は、一般の家庭などで使われる「コンシューマ向け」と、企業や官公庁、教育機関などで使われる「コマーシャル向け」で性質に違いがあり、実際の評価においては注目すべきポイントが大きく異なる。
この連載ではコマーシャル向けOSとしてのWindows 10にフォーカスし、企業でぜひ活用したいWindows 10の機能、展開方法と管理手法、機能検証を行う際に注目すべきポイントなどをお伝えしていきたいと考えている。
Windows 10 の企業向け新機能と特徴
Windows 10ではさまざまな機能が追加されている。企業での利用に活用できる機能という視点で見た場合、機能向上のポイントは4つのカテゴリに分類される。まずは、Windows 10の新機能を見てみよう。
- ユーザーインタフェースを刷新
- 既存のウェブアプリケーションに対応するIE11に加えて、新しいウェブブラウザ「Edge」を搭載
- PCやスマートフォンなどの異なるプラットフォーム向けのWindows OSを完全に一元化。異種プラットフォーム間で単一のアプリケーションを利用可能
(1)ユーザーの利便性とパフォーマンスの向上
- 従来のオンプレミスの管理基盤に加え、クラウドで提供されるSaaSベースの管理インフラとの連携に対応
- 従来のイメージ展開によるOS展開に加え、強化されたアップグレードインストール機能と、市販のPCを業務用PCにカスタマイズするプロビジョニング機能を提供
(2)管理、運用機能の向上
- 標的型攻撃にも対応する新しいセキュリティ機能の追加
- BYODにも対応できる新しいデータ保護機能の提供
(3)セキュリティ機能の向上
- Windows OSをサービス化し、機能改善や新機能を継続的に無償提供
- リリースから1年間、既存のPCに対し無償でWindows 10アップグレード権を提供
(4)新しいサービスモデル
実は、ここで挙げた4つのカテゴリは、(4)の新しいサービスモデルを除き、これまでのWindows OSでも機能向上のポイントになってきた。ユーザーの使い勝手、セキュリティ、管理機能など、企業システムの‟縁の下の力持ち“となるのがWindows OSが担うべき役割であり、新しくなったWindows 10でもその方向性はぶれていない。
企業における機能検証で注目すべきポイント
言うまでもないが、新しいWindows OSの機能を単体で検証することは非常に重要だ。まずは機能を理解したうえで、その機能をどのように活用するのかを考えることから検証をスタートする流れとなる。
しかし、個人所有のPCであれば機能が動作すればOKということになるが、業務用PCについては数十~数万台といった多数のPCを一括して設定管理することが必要になる。実際には“機能の実装をいかに効率良く展開できるのか”がもっとも重点を置くべきポイントになるのだ。機能の活用は、運用管理機能との連携を理解し、いかに効率のよい展開と運用を実施できるのかが非常に重要だ。
Windows 10と既存の運用管理インフラとの互換性
Windows 10は、従来のWindow 7やWindows 8.1と高い互換性を保っている。既存のアプリケーションやドライバも特殊なものでない限り、そのまま使えるケースが非常に多い。管理インフラも既存のものがそのまま使える。Active Directoryのグループポリシーオブジェクト(GPO)やボリュームライセンスの認証サーバなどは、すでに展開されている基盤に従来OSと同様の手順でWindows 10を参加させて、運用することが可能だ。
ただし、ポリシーテンプレートのアップデートやモジュールのアップデートなどWindows 10をインフラに受け入れるための準備が必要なケースも存在する。受け入れ準備に必要な作業の詳細は次回の記事で触れる予定だ。
初回となるこの記事では、まずは、Windows 10導入のスタートとなる「無償アップグレードサービス」について取り上げてみたいと思う。