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記事まとめ「テレワーク常態化で見えたこと」

人工知能と“コグニティブシステム”は目指すゴールが決定的に違う

大河原克行

2015-10-08 17:10


米IBMリサーチのリーディングテクノロジスト 兼 シニアエグゼクティブ Dario Gil氏

 10月8日、米IBM基礎研究所のバイスプレジデントで、ディープラーニング(深層学習)の応用やSyNAPSEチップの研究開発を牽引するDario Gil氏が来日。「コグニティブ(認知型)システム」を説明した。

 Gil氏はまず、「コグニティブシステムは、今後のIBMの方向性を打ち出すという意味でも大切なものであり、社会にとっても大切なものとなる」と説明。同社ではコグニティブシステムの応用を“コグニティブビジネス”と呼んでおり、現在は企業にとどまらず社会全体をどう支援できるのかを研究している段階だとした。米IBMは、コグニティブビジネスに特化した業界初のコンサルティング組織を10月6日に発足させている(関連記事)。

 「現在のコンピュータは、現存する2.5エクサバイトのデータうち、80%のデータの意味が理解できない。これらの80%の情報はソーシャルメディアなどによって発信される自然言語のデータである。また、人間にとってはこの80%のデータは分量が多すぎて処理することができない」とGil氏。その上で、「コグニティブシステムとは、この80%のデータを読んで理解できるようにするもの」と定義した。

 一例として挙げたのが医療分野におけるコグニティブシステムの活用だ。Gil氏は以下のように語った。

 「医師が持っているスキルは高いものがある。多くの論文を読み、学習をして、知識を蓄積する。この勉強をさまざまな人ができるようになり、すべての医師が最高のスキルを共通に持つようになったらどうだろうか。これを実現するのがコグニティブシステムである」

 「将来は、患者がコグニティブシステムに診断してほしいという時代がやってくるだろう。優秀な医師でも、年間200本の論文を読むのが精一杯である。しかし、実際には毎年何十万件もの新たな論文が発表されている。IBMが提供するコグニティブシステムのWatsonは、すでに2000万本の研究論文を読み込んでいる。人間にはこれだけの量を読むことができない。Watsonはこれらの知識を蓄積しており、人間だけでは解決できないものを人間と一緒になって解決する役割を担う」

AIとコグニティブシステムは根本的に違う

 Gil氏は、人工知能(AI)とコグニティブシステムは“全く違うもの”であると繰り返し主張した。

 「AIの技術がコグニティブシステムに使われていることは間違いないが、AIとコグニティブシステムは“ゴール”が違う。AIは科学分野における技術であり人間ができることのイミテーションを目指している。一方、コグニティブシステムは人間が中心。人がより良い作業が行えるようにサポートするものだ」

 「コグニティブシステムは、学習能力を持った点が大きな特徴。これまでのようにルールを書かなくても、システム側が事例を通じて学習することが可能だ。ソフトウェアの世界を抜本的に変えることになる。普通、コンピュータというのは購入した日が最も性能が高い日であるが、コグニティブシステムは最もパフォーマンスが悪いのが購入した日。学習することで、日に日に性能が向上する。その学習の成果をもとに、コグニティブシステムは、人間が持っている専門知識を補完するものだ。コンピュータが人を置きかえるという考え方は、根本的に間違っていると思っている」

ロボティクスとの融合に期待


「(AIの)コンピュータが人を置きかえるという考え方は根本的に間違っている」と語るDario Gil氏

 2011年に米国の人気クイズ番組『Jeopardy!』にWatsonが参加して優勝したことは有名である。当時のWatsonは、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)や自然言語処理技術など5つのテクノロジで構成されていたが、今ではWatsonを支えるテクノロジは50にも及ぶ。

 また、コグニティブシステムと言うとかつてはWatsonだけを指していたが、今はIBMのビジネス全域にまたがる合計28のコグニティブサービスが存在しているという。「現在はクラウドを通じて提供しているが、将来はスマホなどのローカルデバイス上で動作するようになったり、脳型チップとしてIoT機器などに埋め込まれることもあるだろう」(Gil氏)

 コグニティブシステムには7万人のデベロッパーが参加する幅広いエコシステムが存在し、日本ではソフトバンクがロボットの実用化に活用している。「日本は、コグニティブシステムの活用においてリーダーになるチャンスを持っている。日本の強みであるロボティクスとコグニティブシステムを組み合わせることで、優れた効果を発揮できるだろう。2020年の東京オリンピックでは、東京中を自律した自動車が走っているかもしれないが、これにWatsonがどう貢献できるのかということを考えていきたい」(Gil氏)

 Gil氏は、IBMリサーチのリーディングテクノロジスト 兼 シニアエグゼクティブ。サイエンス&テクノロジ担当のバイスプレジデントであり、物理科学を用いた情報技術の最先端分野の研究を推進する組織を指揮している。Smarter Energy Research Instituteの初代所長を務めた経験、ナノテクノロジ分野の専門家として2004年に液浸リソグラフィを使った世界初のマイクロプロセッサの開発チームを率いた経緯を持つ。

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