DocuSignは、ビジネス文書への署名(サイン、押印)をデジタル化するクラウドサービスを手がけるベンダーだ。日本法人のドキュサイン・ジャパンは11月4日、都内で会見し、サインよりも押印が一般的な日本市場にあわせてシヤチハタと業務提携したことを発表した。シヤチハタから印鑑の印影データの提供を受け、サイン画像の代わりに印影画像を使えるようにする予定だ。
同社のサービスは、契約書や稟議書などのように署名のトランザクションによって成り立つワークフローを署名のデジタル化で省力化する。このためのプラットフォームをクラウドサービスの形態で提供する。
ワークフローに参加する当事者がクラウドサービスにログインして署名する仕組み。これにより、「紙の文書を郵送してサイン、押印してもらい、郵送で送り返してもらう」といった手動での処理が要らなくなる。
ドキュサイン・ジャパン 代表取締役社長 小枝逸人氏
DocuSign 創業者兼CSO Tom Gonser氏
署名といっても、公開鍵/秘密鍵の仕組みを用いたPKIベースのデジタル署名を使うわけではない。グローバルではPKIベースの署名を利用してサービスを提供している地域もあるが、日本では現状使っていない。
その代わりに、クラウドサービス上で署名を要求する文書を送信し、文書に署名する。クラウドサービスへのアクセスやログインを介することでクラウドサービス上での署名の妥当性を担保する。
ライセンスは、署名を要求する文書を送信する企業やユーザーに対して月額制で課金する。ユーザー単位のライセンスと、文書の送信数に応じて課金するライセンスの2種類から選ぶ。文書を受け取って署名する側の企業やユーザーは課金されない。通知メールに含まれているURLをクリックしてブラウザでアクセスしたり、モバイルのネイティブアプリケーション(iOS/Adnroid)からクラウドにアクセスしたりして、クラウド上で署名する。
日本法人の設立は5月。ドキュサイン・ジャパン代表取締役社長の小枝逸人氏は、同社のサービスを「今や企業も個人も皆が簡単に使っている技術で、今までこのようなサービスがなぜなかったのかと疑問に思うような技術」と形容する。
「ETC(自動料金支払いシステム)が登場した当初はETCの車載率は低かった。今ではほとんどの自動車が搭載している。ドキュサイン・ジャパンがやりたいことはこういうこと。現状では紙ベースで行われている承認決済プロセスをデジタル化する」(小枝氏)
DocuSignの創業者で最高戦略責任者(Chief Strategy Officer:CSO)を兼ねるTom Gonser氏は、市場にある電子署名サービスとの違いを2つ指摘する。特徴の1つは、誰にでも簡単に使えること。
もう1つの特徴は、文書への署名機能だけでなく、署名を活用した承認決済トランザクションのプラットフォームとして使えること。「現在の承認決済のプロセスを変更することなくデジタル化できる」(Gonser氏)