日本マイクロソフトは12月11日、プレス向けの勉強会を開催し、米Microsoftが掲げるクラウド戦略「インテリジェントクラウド」の意味と内容を説明した。
Microsoftは2016年度(同社会計年度の2015年7月~2016年6月)から、決算書の事業セグメントを(1)Productivity and Business Processes、(2)Intelligent Cloud、(3)More Personal Computingの3つに変更している。前年度決算までは製品ごとにセグメント分けをしていた。新しい3つのセグメントにどの製品が入っているのか、詳細は公開されていないが、(1)はOffice、Dynamics CRM、Office 365など、(2)はMicrosoft Azureとサーバ関連の製品サービス群、(3)はWindows、Xbox、Surfaceなどが含まれる。
インテリジェントクラウド戦略とは、Intelligent Cloudセグメントに含まれるAzureのクラウドサービスと、オンプレミスのWindows Serverに関連する製品サービス群ついてのビジョンということになる。ちなみに、米国時間10月22日に発表した2016年度第1四半期決算では、Intelligent Cloudの売り上げは前年同期比で14%増加している。

Microsoftの事業セグメント
では、インテリジェントクラウドとは具体的にどのような戦略なのか。日本マイクロソフト クラウド&エンタープライズビジネス本部 クラウド&サーバ製品 マーケティング部 部長の斎藤泰行氏の説明によれば、インテリジェントクラウドとは、「コンピューティングサービスを社会インフラの如く提供できるようにするというビジョン」だ。Microsoftは、そのビジョンを実現するための手立てについて、「Pastomer」と「Coopetition」という2つの造語を使って説明している。
顧客を再販パートナーにするPastomer戦略
Pastomerとは“Customer + Partner”だ。Microsoftの“Customer”である大企業の多くは自社データセンターを運用し、自社で使わない部分をコロケーションサービスとして外販をしている。このCustomer企業に、Azureを自社データセンターとのハイブリッドで再販する“Partner”になってもらおうというのがPastomer戦略だ。「国内では、約600社のエンタープライズ企業がPastomeのターゲットになる」(斎藤氏)という。
Pastomerの国内事例では、関西電力グループが、自社設置のプライベートクラウド環境とAzureを専用線接続サービス「Azure ExpressRoute」でつなぎ、ハイブリッドクラウドサービスとして同社グループの顧客に提供している。
Red Hatとの提携に代表されるCoopetition戦略
Coopetitionは“Cooperation(協力)+Competition(競争)”で、データセンター製品技術やクラウドサービスの競合他社と協力していこうというビジョンだ。11月に発表したRed Hatとの提携が良い例で、Azure上で稼働するRedHat Enterprise Linux(RHEL)のネイティブサポートや、オンプレミスのRHEL環境をそのままAzure上に持ち込めるなど、競合との協力関係を強化している。
Azure上の競合製品をサポートするだけでなく、AWSやOpenStack環境のプライベートクラウドとも協力していく。Azure、AWS、VMware、OpenStackの異種クラウド上で稼働するそれぞれのアプリケーションに1つのIDでサインインできる仕組み「Enterprise Mobility Suite」や、異種クラウド間でインスタンスを統合管理する仕組み(「System Center」と「Operations Management Suite」)を提供することも、Coopetition戦略の一環だ。

Coopetition戦略