米国アクセンチュアは1月12日、同社が約700人の上級役職者を対象とした経営課題に関する調査結果を発表した。82%の回答者は「コスト削減によって捻出した資金を、自社の成長分野に投資したい」と考えている一方で、大多数は「成長戦略とコスト削減の足並みが揃っていない」と考えていることが明らかになったという。
コスト削減と投資の関係、CEOとCFOに温度差
調査から、「自社の経営幹部はコストの削減目標を達成するために適切な施策を進めている」と考えている回答者は21%、「自社はコスト削減効果を維持できていると思う」と答えた回答者は36%に留まった。
また、「自社は組織の価値向上につながっていない活動や投資を常に精査した上で打ち切っている」と答えた回答者は23%で、「コスト削減によって捻出した資金が、自社の事業戦略に沿って使われている」との回答は3分の1未満(30%)、「自社は、一貫して事業戦略を実行できるように組織を順応させたり、成長や収益につながる活動に経営資源を集中させたりすることを可能にするような柔軟なオペレーティングモデルを持っている」と答えた回答者は4分の1未満(24%)だった。
こうした状況を招いている一因として、アクセンチュアでは最高経営責任者(CEO)と最高財務責任者(CFO)間の認識の相違が考えられるとしている。約半数(51%)のCEOが「自社は組織の価値を高める活動に優先して経営資源を投資している」と答えたのに対し、同様に答えたCFOは34%と、温度差があるという結果が出た。
また70%のCEOが「コスト削減によって捻出した資金の再投資先の精査を行い、その効果測定を行っている」と答えたのに対し、同様に答えたCFOは49%に留まった。さらに、20%のCEOが「優先する再投資先は、短期で投資効果を得られる分野」であると認める一方、同様に答えたCFOの割合は30%だった。
アクセンチュアは、「コスト削減自体が目的とならないためには、経営者は捻出した資金を成長分野に振り向けたいという“意向”を持つだけでなく、あらかじめ自社の成長を促進させる要因と阻害する要因、そして資金の再投資先となる施策について明確な“意思”を持つべき」と指摘する。
デジタル分野への投資が重要という認識は一致
これに対しデジタル分野への投資については、意見の一致が見られた。54%以上の回答者はデジタル分野への投資を既に行っており、61%は「テクノロジをさらに活用できれば、自社におけるオペレーティングモデルの運用コストを半減できる」と回答。また、85%の回答者が「デジタル事業は戦略的な成長を実現させる要因である」と答えていることに加え、82%は「デジタル戦略が新しいオペレーティングモデルを可能にする」と回答している。
アクセンチュアは、企業に求められる柔軟性や市場対応力を獲得するには、デジタルビジネスの戦略が重要な役割を果たすことが重要という結果が出たと説明する。持続的な成長を実現するには、それよりもまず最高経営幹部の間で事業戦略とコスト管理を連動させる全体方針を合意することが必須であると指摘。企業が成功するためには、利用可能なデータを活用して収益につなげることや、デジタルによって導き出された情報を経営の意思決定につなげる体制を構築すること、俊敏な組織を作ること、イノベーションを加速させること、そして従来のビジネス機能をデジタル化することが求められると訴えた。
調査は9つの地域(ASEAN、ブラジル、中国、フランス、ドイツ、イタリア、日本、北米、英国)、13の業界(自動車、銀行、化学、通信、消費財、エネルギー、健康、ホスピタリティ、産業機器、医療技術、製薬、小売、公益事業)における682人の上級役職者を対象とし、オンラインで実施された。
回答者の54%の回答者は最高経営幹部(CEOまたはCFO、COO)、16%は支社や事業部における最高経営幹部、残りの30%は年間10億ドル以上の売上を持つ企業の最高経営幹部直属の管理職。