同レポートは「多くの労働集約的企業は、費用がかかる労働者をより安価なロボットや知的なソフトウェアで置き換えることで、利益幅を拡大できるはずだ」とし、「短期的な労働市場の二極化と所得格差の拡大は、収入、スキル、資産を持つ層が、より一層利益を得ることを意味している」と結論づけている。
貧困問題に取り組む非営利組織であるOxfamは、この予想の発表前に、世界人口のうち下位半分の貧しい人々が持つ資産と上位62人の富豪(そのうち53人が男性)が持つ富は同じであり、上位1%の富裕層が持つ資産は、残り99%が持つ資産よりも大きいと発表している。
一方で、失業者が享受できるメリットとして、労働集約的に生産される商品の価格が下がることにより、生活費が下がる可能性がある。
金持ちはますます金持ちに
勝ち組と負け組の間の貧富の差は、グローバルなレベルでも発生する。
レポートでは、ロボット工学や自動化、3Dプリンティングなどの技術が普及すると、製造業やその他の仕事が先進国に戻ってくると予想している。これらの技術は、オフショアの低賃金労働者よりも安く製品やサービスを提供できるからだ。
「このステージでは、先進国は相対的に有利になり、発展途上国は、低スキル労働力の豊富さの利点が縮小し、むしろ逆風として作用するため、より大きな困難に直面する可能性が高い」(同レポート)
新興国では、これらのテクノロジの恩恵を受けるためのインフラが、先進諸国ほどは整っていない場合がある。
レポートには、「発展途上国は、極端な自動化による低スキル労働の減少を含む第4次産業革命の脅威に直面するが、接続性の劇的向上により再配分されるはずのメリットを享受できるだけの、技術的な能力を持っていないかもしれない」と書かれている。
レポートでは、新技術による変化の影響を最も強く受けるのはどの国かを評価している。悪影響が最も大きいのはインド、メキシコ、アルゼンチンであり、小さいのはスイス、シンガポール、オランダだという。
AIやロボット工学が既存産業に与える混乱の程度については、意見が分かれている。現時点では、ある程度複雑な身体的作業については、人間にとっては当たり前のものも、ロボットには難しいという場合も少なくない。これは、2015年に開催されたDARPA Robitics Challengeで、多くのロボットが直立した状態を保てなかったことからも明らかだ。またロボットは、倉庫の棚から品物を取り出すといった、人間が単純だと思っている作業を行うのにも苦労しており、この分野に取り組んでいるあるAI研究者は、最近次のような発言をしている。
「将来ロボットが、人間と同水準の作業スキルを獲得する日が来ることは確実だ。だが、それが10年後か、100年後か、1000年後かは、まだ推測の域を出ない」
レポートでは、インターネットやAIを使ったテクノロジを活用して成功するのは、古くからある大企業と比べて、時価総額が高く、比較的従業員数が小さい企業である可能性が高いとしている。
またこの傾向は、現在人気のあるインターネットサービス企業ではすでに顕著であるとして、従業員が55人しかいないにもかかわらず、2014年に220億ドルでFacebookに買収されたメッセージサービス企業WhatsAppを例として挙げている。
同社の資本集約的ビジネスモデルは、例えば時価総額は同じ220億ドルだが、8万2300人の従業員を抱える米国の航空会社United Continentalのような古い企業とは対照的だ。
同レポートでは「WhatsAppの従業員1人当たり4億ドルという企業価値は極端な例だが、この例は将来、資本集約度の低いビジネスモデルから、非常に大きな利益と不均衡が生まれる可能性があることを示している」と述べている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。