大木豊成「Apple法人ユースの取説」

管理部門がなくなる時代--そして情報システム部門がなくなる時代

大木豊成

2016-02-16 07:00

 「管理部門がなくなる」と聞いたら、読者の皆さんはどう感じるだろうか。「なくなったら困る」「経費精算は誰がやってくれるんだ」と困る人もいるだろう。「いや、別にいいんじゃないか」と思う人もいるかもしれない。あるいは当事者で「いやいや、あり得ない」と憤慨する人もいるのではないだろうか。

 ちなみに、筆者の会社には管理部門は存在しない。管理部門の機能を全社員で分担することで、そのコストを下げているのだ。

 まず、管理部門を大枠で整理すると「人事」「総務」「経理」だ。企業によっては、そこに法務とか、広報などが入るかもしれないが、大雑把に分類するとこういうことだろう。

 採用は、採用したい部門の人間がやればいいし、総務の仕事は全社で分担する。経理業務は管理職が集約し、経営者が決済する。と、こんなことを言うと実現不可能だと思われるかも知れないが、さまざまなクラウドサービスが登場し、AI、ロボティクスが企業の中で実用化され始めた今、本気でそんなことを考えてもいい時代ではないだろうか。

シェアードサービスという考え方

 もちろん、管理部門をなくして社員の負荷を上げ、ブラック企業にしよう、という話ではない。管理部門、例えば経理の人間が経理だけをやらず、シェアードサービスとして他部門のサポート業務ができるようになれば、どこかの部門だけが忙しい、などということはなくなる。シェアードサービスという考え方は新しいものではない。一部の大企業では、管理部門を子会社化し、その会社が人事業務や経理業務を親会社やグループ企業に提供している。この概念は日本ではまだまだ普及していないが、国によっては当たり前なのだ。

ロボットに任せる仕事


 ソフトバンクが、表参道にロボットが接客するソフトバンクショップを3月にオープンすることを発表している。携帯ショップは人材難で困っているところが多い。そこに新規申し込みという比較的シンプルな業務をロボットに担当させることで、話題性もさることながら、効率性を求めたのだ。Pepperには月額税別5万5000円×36カ月(合計税別198万円)のレンタルプランが用意されていることから、人件費になぞらえて「月給は5万5000円」だとしている(関連記事)。この「月給5万5000円」の社員は、退職する心配はないし、何より管理部門のケアが必要ない。

 愛知県のイオンモール常滑の中にあるイオン銀行も、Pepperに受付をやらせている。ここでは、来客がPepperのタブレットに表示されたアンケート方式で、カードを持っているか、持っているのであればどのカードなのか、そして相談内容をヒアリングして、店員にバトンタッチする。店員は何を準備すればいいのかを理解した上で接客できることで、効率化も図れるし、顧客満足度の向上も狙うことができる。

 また昨年、長崎のハウステンボスに、従業員がロボットだけというホテルが開業している。「変なホテル」という名称のホテルは、変化し続けるホテルという意味だと、ハウステンボス 社長の澤田秀雄氏が言っていたが、フロントデスクはロボット、荷物を運ぶベルボーイもロボット、観光する間に荷物を預けるクロークもロボットなのだ。

 これらのような飛躍的な発想を持った企業や店舗が出てくると、管理部門の存在を含めて今までの概念を大きく変えないと運営できなくなってくるのだ。

そして情報システム部門がなくなる時代

 情報システム部門の成果に関しては、かなり以前から指摘されているところだ。アイ・ティー・アールの内山悟志氏は「IT部門では情報発信力が欠如している」と書いているし、ガートナーも「IT部門はもっとマーケティング部門と密接な連携をとるべきだ」と指摘している。筆者も過去に何度も、顧客企業の中で邪魔者扱いをされている情報システム部門を見てきた。ユーザー部門から見ると身勝手に見えたのかもしれないし、保守的すぎるという意見も耳にした。

 この連載は「Apple法人ユースの取説」と題してアップル製品を法人で使うことにフォーカスしているわけだが、マルチOS管理は、これからの情報システム部門の重要な課題になってくる。Windows以外のデバイスを、面倒だという理由で排除したがる情報システム部門は、ますます存在意義を問われるようになるだろう。以下、これからの時代の情報システム部門の在り方について、いくつかの視点で考察してみる。

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