「オールフラッシュストレージが流行っているが、重複排除に依存しているので用途を選ぶ。われわれはHDD(ハードディスク)と大容量キャッシュを上手に組み合わせた」――。
ティア1(1次)ストレージ「InfiniBox」を開発するイスラエルのINFINIDATは3月8日、都内で会見を開き、日本法人のインフィニダットジャパンを1月末に設立したと発表した。
インフィニダットジャパン カントリーマネージャ 岡田卓也氏
日本法人カントリーマネージャを務める岡田卓也氏は「価格は従来の1次ストレージの3分の1から4分の1くらい」と価格の安さをアピール。99.99999%という高可用性や最大8kワットという省電力もうたう。IBMの「XIV」やEMCの「VMAX」といった既存の1次ストレージのリプレース需要を狙っている。国内では3月中にパートナー経由での販売を開始する。販売目標は3年間で25億円。
1次ストレージ用途のSAN/NAS統合ストレージであり、DELL製の汎用PCサーバと自社開発のストレージソフトを組み合わせている。2009年の創業時にIBMからXIVの開発メンバーを取り込んでおり、XIVの経験をベースに新規のストレージとしてソフトをいちからスクラッチで開発した。
形状はラック型で、HDDをフル搭載した構成で出荷する。実際に使った量に応じてライセンス料が決まる従量課金型を採用。価格は、ハードウェアの下位モデル「F2000」で容量250Tバイトの最小構成で3800万円前後、上位モデル「F6000」で容量2.8Pバイトの最大構成で2億円前後。
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1ラックの本体に、コントローラ3台と三重化電源、HDD格納ユニット8台(1ラック全体で480個のHDD)を搭載する。3台のコントローラはすべてアクティブ構成で動作し、負荷分散と高可用性を両立する。コントローラとHDDはSASで接続し、全コントローラから全HDDにアクセスする。外部サーバからはSAN(FibreChannel)またはNFSでアクセスする。約1カ月後にはメインフレーム接続用にFICONチャネルを、2016年秋にはIP-SAN(iSCSI)を追加する予定。
大容量キャッシュでHDDを高速化、重複排除は使わない
最大の特徴は、オールフラッシュストレージとは異なり、データをすべてHDDに格納するアーキテクチャを採用したこと。アクセスを高速化する手段として、メインメモリをライト(書き込み)キャシュとリード(読み出し)キャッシュとして利用し、SSD(ソリッドステートドライブ)をリード(読み出し)キャッシュとして利用する。
メインメモリの約半分をライトキャッシュとして使い、ライトキャッシュをいっぱいまで使ってからHDDに書き込む。ライトキャッシュは揮発性メモリなので、停電時にデータをHDDに書き込めるようにバッテリを搭載する。メインメモリ容量は、上位モデルのF6000で最大2.3Tバイト。一方、リードキャッシュとして使うSSDの容量は最大86Tバイト。
INFINIDAT CMO Randy Arseneau氏
480個のHDDすべてを均等に使うことも特徴だ。書き込むデータをサイズ64Kバイトのチャンク(欠片)に分割または集約し、チャンク単位で全HDDに分散配置して書き込む。書き込みの最小単位は、14個のチャンクと2個のパリティデータで構成。これにより、アクセス性能を均質化するほか、一般的なRAID構成と比べてHDD故障時や交換時のリビルド時間を短縮する。平均して2~3分でリビルドが終了するとしている。
データ圧縮機能を2016年内に追加する予定だが、INFINIDATでは重複排除機能を取り入れる予定はない。イスラエル本社で最高マーケティング責任者(CMO)を務めるRandy Arseneau(ランディ・アルセノー)氏は、「オールフラッシュストレージは重複排除機能に依存している。重複排除は予測が難しく、用途を選ぶ。現状ではHDDとキャッシュを組み合わせた構成がベストだ。HDDは価格も安い」と説明する。