インターネットが普及してスマートデバイスからSNSにアクセスしてコミュニケーションを取るのが当たり前となった現在は、ウェブでの行動履歴や人間の考えなどさまざまな事柄がコンピュータで計算できるというビッグデータ社会と表現できる。
もちろんビッグデータという言葉が登場する以前から、企業は業務で発生するデータを分析するビジネスインテリジェンス(BI)ツールを活用してきた。データを分析したり解析したりして企業全体のコストを削減、あるいは売り上げを伸ばすためにキャンペーン施策をデータで裏付けるといったことはビッグデータ以前から進められていた(2009年にデータを蓄積するためのデータウェアハウス=DWHとBIの業界動向をまとめている)。
- TechRepublic Japan:セルフサービスBIとは何か?
- 第1回:なぜ「セルフサービスBI」がビジネスユーザーにウケるのか?
- 第2回:IT部門は「セルフサービスBI」にどう関わるべきか?
- 第3回:事例に学ぶ「セルフサービスBI」導入の3つのポイント
- TechRepublic Japan:セルフサービスBI座談会
- (1)見直し迫られるIT部門の役割
- (2)エンドユーザーのデータ活用法を理解すべき
- (3)守るデータと守らないデータを見極める
- (4)IT部門はデータリテラシーを高める“コンシェルジュ”に
- (5)データに基づいたコミュニケーションを深める
ビッグデータという考え方が社会に普及するのと並行して、BI/DWHに関連した技術も進展している。ハードディスクがシステム全体のボトルネックとなっていることから、その課題を解消するために生まれたのが、インメモリデータベースであるし、フラッシュメモリを活用したオールフラッシュストレージであると言える。そしてセルフサービスBIも、この数年の技術進展の成果と言い表せる。
セルフサービスBIは、従来のBIツールとはさまざまな技術的な差異があるが、特に異なるのがコンセプトが示す通り、IT部門があまり介入せずに、エンドユーザーが自由にデータを分析できるという状態を作り出せることにあると言える(もちろん、IT部門にデータを要求したら、対応が遅かったり古すぎるデータが出てきたりといったユーザー部門の不満も背景にある)。
しかし、セルフサービスBIと言っても、BIである。データの“鮮度と精度”が重要であることは従来のBI/DWHとまったく変わらない(2005年にBIを活用するための要点を掲載しているが、10年以上経った現在でもかなりの部分で参考になる)。
BIをどんな業務に活用するかでも異なるが、企業が保持するデータ全体を分析して初めて、企業全体の実像が見えてくる。セルフサービスBIだからと言って、クライアント端末にある表計算ソフトのデータだけ、部門で所有するデータだけを分析しても、企業全体にとって意味のある情報が得られるかどうかは不明だ。
やはり、統合基幹業務システム(ERP)などの基幹系システムで発生するデータが必要となってくる。つまり、IT部門によるガバナンスを効かせる必要がある。ユーザー部門が野放図に使うことで、機密情報を含むデータが不注意に外部に流出するという状況も考えられる。セルフサービスなツールだとしても、IT部門がガバナンスを効かせて初めて効果的なデータ活用体制を構築できる。
そうした状況を踏まえてZDNet JapanとTechRepublic Japanは6月16日にBIセミナー「セルフサービスな時代だからこそガバナンスが必要--IT部門の立ち位置が変わるBI新時代」を開催する。特別講演には、ユーザー企業の立場からキリンとセガホールディングスが登壇。その2社がそれぞれどんな背景からデータを分析するようになったのか、毎日どんな風に分析する体制を回しているのかなどを聞く。有益な情報が得られるはずだ