「S/4HANA」の強みはアーキテクチャ、これからはマイクロサービス--SAP幹部

谷川耕一 2016年07月07日 06時30分

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 2015年2月に登場した、SAPの新ビジネスアプリケーション群「SAP Business Suite 4 SAP HANA(S/4HANA)」。新規ユーザーのほとんどが、この新しい製品を選択していると言う。S/4HANAがなぜ生まれ、統合基幹業務システム(ERP)パッケージ「SAP ERP」などの従来製品からいったい何が変わったのか。SAP SEのエグゼクティブボードでプロダクト&イノベーションを担当するBernd Leukert氏に話を聞いた。

シンプルなアーキテクチャがもたらすメリット

――S/4HANAの強みはどんなところでしょうか? 従来のERPと何が変わったのでしょうか?

 S/4HANAは、企業のコアとなるビジネスプロセスをデジタル化できるプラットフォームです。従来のERPとはアーキテクチャが異なります。シンプルなアーキテクチャになり、顧客にとってはレスポンスタイムが極めて短くなっています。それをSAPでは「ライブ」あるいは「ゼロレスポンスタイム」と呼んでいます。これがまず1つ目の違いです。

 2つ目は、レスポンスが良くなったことでビジネスプロセスの見直しが可能になりました。また、ユーザーのオペレーションが少なくなりTCO(総所有コスト)の削減にも貢献しています。さらには、データのフットプリントサイズが小さくなり、結果的にストレージ削減の効果もあります。これらはユーザーの労力を減らすことにもつながっています。

 3つ目は、分析やレポーティングなどのビジネスインサイトを得る仕組みをERPのトランザクションに組み込めるようになったことです。以前のERPでは、レポーティングなどのデータはERPとは別に構築したデータウェアハウス(DWH)から取ってこなければなりませんでした。それがS/4HANAの1つのプラットフォームに統合され、ユーザーインターフェースもシンプルで使いやすいものになっています。

 SAPには40年あまりの歴史がありますが、これらの強みがあることで今までにない速いペースでS/4HANAは普及しています。

SAP SE エグゼクティブボード プロダクト&イノベーション担当 Bernd Leukert氏
SAP SE エグゼクティブボード プロダクト&イノベーション担当 Bernd Leukert氏

――逆にS/4HANAにおいて、現状では足りないところや十分ではないところはありますか。

 ソフトウェアは家を建てるように、作って終わりではありません。進化を続ける必要があります。S/4HANAは現状でも包括的な機能を提供しており、それで25の業界に対し価値の高いソリューションを展開できています。さらに顧客は世界中にいて、それぞれの地域におけるローカライズの要求にも応えています。そういった取り組みにより顧客にビジネス価値を提供できているのです。現状でもS/4HANAは、かなり優れた製品だと考えています。

 もし弱点があるとすれば、それはむしろ新たなビジネスのチャンスでしょう。SAPには自動車や金融、流通などあらゆる業界を代表する顧客がいます。彼らからは各業界の知識を得て、SAPは彼らにITの価値を提供しています。そんな彼らとともに、今後も製品の革新を続けていきます。

検索エンジンのやり方を組み込む

――アーキテクチャを変更し新たに生まれ変わったS/4HANAですが、これはインメモリデータベースの「HANA」があったから刷新されたのでしょうか? それともHANA登場前から、次のERPではアーキテクチャの変更が必要だと考えていたのですか?

 HANAの登場が、アーキテクチャを変えるきっかけになりました。ERPのようなアプリケーションでアーキテクチャを変更する際には、既存ビジネスを中断したり破壊したりしないことが大事です。今回はそれを十分に考慮しながら、アーキテクチャをシンプル化しています。それによりコアとなるビジネスプロセス部分が変わるわけではありません。

 大きく変わったのはデータベースのデザインです。HANAにはインメモリとカラムストアがあり、これで極めてレスポンスが速くなっています。以前のERPのアーキテクチャではさまざまな処理をするために、事前に集計をして結果をすぐに返せるようにしていました。

 これがHANAの速いレスポンスにより、オンザフライで集計ができるようになったのです。そのため、データ変更の度に事前集計や集計結果の保存が必要なくなりました。これはデータベースデザインの複雑性を排除することにもつながっています。つまりは、HANAがトリガーになってアーキテクチャがシンプルになったのです。

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