OSSとビッグデータアナリティクス

競争優位性を実現するアナリティクスの2つの要因

島田 茂(日本テラデータ)

2016-08-22 09:55

はじめに

 前回はアナリティクスにおいて、分析担当者の作業の大半を占め、負荷の高い作業である「データ整理・加工」から「分析用データセット作成」について述べた。第4回では、競争優位性を実現するためのアナリティクスの2つの要因について考えてみたい。 

 アナリティクスは、短期的な視点と長期的な視点によって、その活動内容が異なる。短期的、長期的、それぞれの取り組みの中で、競争優位性を実現する取り組みは、以下の2つである。

  • 1.短期的な取り組み:モデル構築力の強化
  • 2.長期的な取り組み:アナリティクス活動のアセット化

 モデル構築力の強化とは、現在、抱えている課題に対して、アナリティクスを活用することにより、より多くの利益を生み出すための取り組みである。つまり、予測モデルを構築することであり、モデルの精度向上することである。

 アナリティクス活動のアセット化とは、新たなテクノロジーの取込み、再利用ができるように整備したデータ、効率化されたプロセス等、組織的な活動として自社内に仕組み化することである。

モデル構築力の強化

 モデル構築とは、「アナリティクスの対象における構造化仮説(モデル案)を、データを用いて検証を繰り返すことである」と、本稿第2回第3回にて詳しく解説してきた。

 モデル構築の具体的な進め方を、仮説構築における思考のループ(図1)を通して再現する。


図1

事象の観察

 まずは、解決すべき課題の背景を観察することから始める。観察したさまざまな情報をビジネス上のフレームワークを使用して整理すると効率的である。※フレームワークは、構造化のテンプレートとして扱えるものを想定しているが、観察する事象の全てに既存のフレームワークが存在するわけでないので、状況に応じて、MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)に構造化されたフレームワークを作成することが求められる。

フレームワークの例

  • 社会情勢:PEST/5FORCE(需要予測モデル構築時に有効)
  • 購買活動:AIDMA/AIDA/AISAS/AIDCA(販売予測モデル構築時に有効)
  • 生産活動:バリューチェーン(生産性の検証、バリューチェーン内の投資対効果分析などに有効)
  • 業務活動:PDCA(営業要員の活動量分析などに有効)
  • 一般活動:5W1Hおよびその派生形

構成要素の抽出

 次に、事象を観察し、情報を整理すると、その事象の構成要素が見えてくる。簡単な例として、ネット上での消費者の行動をAISASを使って整理する一例を作成した(図2:本稿のために簡易的に作成)。構成要素を整理した後には、構成要素に対応するデータを特定する。保有データの中に、必要と考えるデータがない/取得が難しい場合は、新たに収集するか代替指標を作成する必要がある。

図2
図2

構造化

 最後に抽出した要素を構造化する。抽出した要素の関係性を、データを用いて地道に検証して、構造を見直す作業となる。場合によっては、事象の観察に戻ったり、構成要素の抽出に戻ったりして作業を進める。図2は、仮説に基づいて、抽出した要素を整理した1例であり、図3は、構造化を試みた1例である。

図3
図3

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