IDC Japanは9月15日、何らかのクラウドを利用中の国内企業におけるクラウドの成熟度を分析した結果を発表した。調査は、クラウドに関わるユーザーアンケート調査「IDC CloudView Survey」として実施したもので、クラウドをデジタル戦略の中核と位置付けている「成熟度ステージ5(継続的革新)」の企業は6.3%にとどまる結果となった。
国内クラウドの成熟度ステージ分布(n=231)
IDCは、企業のクラウドの成熟度ステージや、次のステージに移行するためのガイダンスを「IDC MaturityScape: Cloud」としてまとめている。同社では「ビジョン(Vision)」「人材(People)」「プロセス(Process)」「テクノロジ(Technology)」の4つの特性を成熟度の評価軸として設定しており、2015年12月から2016年1月に実施したユーザーアンケート調査「IDC CloudView Survey」の結果を分析することによって、企業のクラウドの成熟度を考察した。
なお、本調査では、何らかのクラウドを利用中の国内企業(従業員規模500人以上)231社のアンケート調査結果を分析している。
調査から、国内ユーザー企業の44.2%が、クラウドの成熟度ステージ1~2にあることが分かった。同ステージの企業は、クラウドの利用価値について、「コスト削減」「IT/業務の効率化」を重要視する傾向がある。ITの俊敏性向上などコスト削減/効率化以上の効果を期待し、実現に取り組んでいる成熟度ステージ3~5の企業は55.9%となった。すなわち、クラウドを利用中の国内ユーザー企業の半数以上は、クラウドを単なるコスト削減/効率化の手段から、ビジネス強化のための基盤として考えるようになっている。
調査では、クラウドを活用し、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進している企業(リーダー企業)と、そうでない企業(フォロワー企業)の比較もしている。リーダー企業は、現在の成熟度ステージが低くとも、クラウドをIT課題としてだけでなくビジネスと結び付けて検証している一方、フォロワー企業は、クラウドをIT課題として考えており、ステージが低い企業は「コスト削減」「効率化」に注力し、ステージが高い企業であっても「ITガバナンス強化」「ITの俊敏性向上」の取り組みにとどまっているという。
同社では、多くの企業がDXに高い関心を寄せているものの、その中核となるクラウドの成熟度は決して高くないというのが現状であり、フォロワー企業がリーダー企業となるためには、ITとビジネスの間の障壁を取り除く企業文化の変革が求められているとしている。
同社ITサービス リサーチディレクターの松本聡氏は、以下のように分析している。
「企業は、自社のクラウドの成熟度を定量的に評価し、成熟度を高めるためのアクションを実行に移すことが重要である。また、クラウドはIT課題ではなく経営課題として考え、全社的な協業体制によってクラウドファースト戦略を遂行すべきである」