Tech Summit

AIと人が協働する未来が目の前にある:Microsoft Tech Summit基調講演

阿久津良和 羽野三千世 (編集部)

2016-11-02 07:00

 日本マイクロソフトは11月1日から2日間、企業のIT導入・運用に関わる技術者および意思決定者向けのカンファレンス「Microsoft Tech Summit」を都内で開催している。同イベントでは、9月に米国で開催した「Microsoft Ignite」をベースに、日本市場向けにアレンジを加えたブレイクアウトセッションが多数披露された。本稿では1日の基調講演で語られた内容を報告する。

 同社は5月にも開発者向けカンファレンス「Microsoft de:code」を開催し、今回のTech SummitもIT技術者が対象。このようにIT技術者・IT開発者に強く関与する理由について、同社 執行役員 デベロッパー エバンジェリズム統括本部長 伊藤かつら氏は、「われわれだけでは新たな世界を作り出すことはできない。多くのIT技術者やIT開発者が参加するデジタル変革の実現を目指しているため」と説明する。

 以前はコスト削減の対象となりがちだったITだが、「時代が変わったと確信する」と伊藤氏。ITがビジネスを加速させる鍵になる時代を迎えた。同イベントでの日本マイクロソフトのメッセージは、IT技術者・開発者は今の時代の核となる「ITヒーロー」であるという鼓舞だ。「Microsoft創設当初にリリースしたBASICも開発者向けツール。クラウド&モバイル時代でも、われわれの(開発者を支援する)姿勢は変わらない」(伊藤氏)。また、Windows 10のアクティブデバイス数が4億台、Office 365の商用ユーザー数は7000万人、Azure ADへのログイン数は10億回に達しているなどの数字を用いて、自社クラウドやクライアントOSの普及具合をアピールした。


日本マイクロソフト 執行役員 デベロッパー エバンジェリズム統括本部長 伊藤かつら氏

 他方で日進月歩の勢いで変化するITに追いつかない、という技術者の声に対しては、「セキュア」「マネージ」「イノベート」と3つのキーワードで解決できると述べている。こちらについては日本マイクロソフト マイクロソフト テクノロジーセンター センター長である澤円氏が多くの事例やデモンストレーションを交えて紹介した。

 「セキュア」については、サイバー攻撃のリスクは年間3兆円に達し、サイバー犯罪はインターネットから生まれる利益の15~20%を不正取得。流出する顧客情報は日本人口よりも多い1億6000万人分にも及んでいるという。昨日米国で発生し、世界中のインターネットトラフィックを不調にしたDNSサービスへのDDoS攻撃に用いられた踏み台が監視カメラだったことを引き合いに、「いつどんな形でサイバー攻撃を受けても不思議ではない」(澤氏)と現状を分析。また、事例としてはセキュリティ面で苦い経験を持つベネッセが、Windows 10やOffice 365、EMS(Enterprise Mobility Suite)を導入し、顧客情報に厳しい会社を目指している取り組みを紹介した。


日本マイクロソフト マイクロソフト テクノロジーセンター センター長 澤円氏

 基調講演では、Microsoft本社からWW Chief Security AdvisorのJonathan Trull氏が登壇し、セキュリティの現場について説明した。Trull氏は、Microsoftのセキュリティチームを率いて、顧客に対してサイバー脅威に対する将来的な戦略を手助けする業務を行っている。

 澤氏がTrull氏にセキュリティに関するホットな話題を訪ねると、遠隔計測データや何億のマルウェア情報、セキュリティ専門家で構成されるセキュリティ基盤「インテリジェントセキュリティグラフ」を挙げた。

 インテリジェントセキュリティグラフは、集積したサイバー情報を1箇所に集めて可視化し、サイバー攻撃を定期的に追跡、把握するためにMicrosoftが構築したソリューションである。このデータは「Windows Defender ATP(Advanced Threat Protection)」なども利用しており、Microsoftのセキュリティに関する巨大な知識基盤となっている。

 澤氏がさらにセキュリティ対策で必要なことを質問すると、Trull氏は「幅を持った綿密な防衛戦略」と回答。1つのセキュリティ対策ツールだけではなく、多様な防衛方法を用意すべきと述べた。また、サイバー攻撃側の思考パターンを理解し、多様な防衛方法やIT技術のすべてを巻き込んで対応しなければならないという。デモンストレーションでは、日本マイクロソフト テクノロジーセンター セキュリティアーキテクト 蔵本雄一氏がWindows 10の仮想サンドボックスによるマルウェア防御や、クレデンシャルガード機能、Windows Defender ATPによる分析とAzure Security Centerの可用性を披露した。


Microsoft WW Chief Security Advisor Jonathan Trull氏

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. ビジネスアプリケーション

    生成 AI 「Gemini」活用メリット、職種別・役職別のプロンプトも一挙に紹介

  2. セキュリティ

    まずは“交渉術”を磨くこと!情報セキュリティ担当者の使命を果たすための必須事項とは

  3. セキュリティ

    迫るISMS新規格への移行期限--ISO/IEC27001改訂の意味と求められる対応策とは

  4. ビジネスアプリケーション

    急速に進むIT運用におけるAI・生成AIの活用--実態調査から見るユーザー企業の課題と将来展望

  5. セキュリティ

    マンガで分かる「クラウド型WAF」の特徴と仕組み、有効活用するポイントも解説

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]