アスタミューゼは11月18日、日本と米国の人工知能(AI)分野の研究テーマを比較調査した結果を公表した。比較したのは、日本の文部科学省による科学研究費助成事業(科研費)と、アメリカ国立科学財団(National Science Foundation:NSF)から交付される競争的研究資金プログラムに採択された研究テーマ。アスタミューゼが独自の分析によりAI分野のみを抽出し、下表の5用途に分類して日米比較した。それによると、日本は米国に比べ、一般的に言われるように明確な用途に分類されない基礎研究の比率がより高く、用途別にみると生産技術分野などが高い比率にあるという。
本調査における、AIの用途および想定される製品・サービスの分類
調査対象としたのは、科研費およびNSFにおける、研究開始年基準で2006年1月1日~2015年12月31日の期間の研究。AI分野全体の研究テーマ数は、科研費が1459件(2006~2015年)、NSFは2719件(2006~2015年)だった。このうち明確な用途に分類された研究テーマの件数をみると、科研費が522件(AI分野全体の36%)、NSFでは3536件(同133%)となった(複数用途に分類される研究テーマをカウントした上で合計しているため、AI分野全体の研究テーマ数とは一致しない)。このことから、日本では基礎研究の比率が高く、米国ではより用途の明確な実践的研究が活発であることが推測される。
また、それぞれの年ごとの推移をみると、NSFがほぼ右肩上がりに伸びを見せているのに対し、科研費は2012年をピークに2014年にかけて落ち込みを見せ、2015年にやや復調していることが読み取れる(ただし、科研費の場合はデータの整備状況により、14年度・15年度の一部が集計外となっている場合がある)。
科研費(上)とNSF(下)の研究テーマ件数の推移(グラフ中の年次は研究開始年)
用途別にみると、科研費では「生産技術」「コミュニケーション」が高い比率で推移しているほか、東日本大震災の翌年にあたる2012年には「地理・防災」が増加、2015年には「医療・ヘルスケア」が伸びを見せている。一方、NSFでは、IBMの「Watson」がクイズ番組で人間に勝利し(2011年)、ヘルスケアを注力分野として大学・研究機関との積極的な提携を展開しはじめた翌年の2012年から「医療・ヘルスケア」が急伸しているほか、「マーケティング」が順調な伸びを見せている点にも注目される。