調査

日本のIT人材は2020年末までに30万人以上不足に--ガートナー

NO BUDGET

2017-01-29 07:00

 ガートナー ジャパンは1月24日、2017年以降のIT人材に関する展望を発表した。「ITサービス・プロバイダーの技術者」および「ユーザー企業の情報システム担当者 (IT組織または事業部門に所属)」をIT人材と定義し、その予測を行ったもの。

 展望の主なものは以下の通り。

2020年末までに、日本のIT人材は質的に30万人以上の不足に陥る

 すでに国内のIT人材の不足は深刻で、ガートナーが国内で2016年12月に実施した調査では、「IT人材が不足している」と回答した企業は全体の83.0%にのぼり、さらに全体の20.4%が少なくとも現状の1.5倍の人数が必要であると考えていることが分かった。さらに今後は、デジタル技術を用いた新分野での人材需要が増加する一方で、既存のIT人材のスキル転換は容易ではないため、ミスマッチに起因する質的な人材不足が顕在化すると予測される。

 これに対しガートナーでは、ITリーダーは、これまでのように人事部門に主導権を委ねるのではなく、自らの職責の1つとしてIT人材の確保と能力の向上に優先度を上げて取り組む時期に差し掛かっていると指摘した。ITリーダーは、人員の確保に優先的に取り組むと同時に、「能力(ケイパビリティとキャパシティ)の確保」という観点からソーシングを見直す必要があるというのだ。また、運用などの適合性の高い分野に関しては「人」にこだわらず、スマート・マシン・テクノロジやオフショアリングも選択肢に含めることが重要だとしている。

2020年までに、日本のIT部門の10%が、IT組織の「一員」としてロボットやスマート・マシンを採用する

 ロボットやスマート・マシンをIT組織の「一員」として採用する企業は、今後徐々に増加すると予測される。ロボットやスマート・マシンが採用される分野としては、特にコグニティブ技術を活用できる分野やプログラム可能なプロセスなどが有望だ。現時点では、こうした技術とサービスに対する関心は高いものの、多くの組織はコストを重視しており、企業のIT部門が、パイロット的なロボットやスマート・マシンの採用からリソース配置の見直しを伴う戦略的な導入に発展していくまでには、少なくとも3年を要すると考えられる。

 こうしたロボットやスマート・マシンの採用は、代替対象となる定常業務に従事している技術者にとっては脅威となり得る反面、IT人材市場においては既存システムとの連携やソリューションの調整など、新しいスキルの需要が増加するほか、技術者の育成にもポジティブな効果が予想されるしている。優秀な技術者ほど現場での引き合いが強く、新しい役割へのシフトやステップアップが難しい傾向があったが、そのノウハウや行動特性をソリューションによって再現することが可能になれば、IT人材の健全な育成を阻んできた構造的な障害を排除することも可能になる。

2020年までに、オフショアリングを実施する日本のIT部門の50%が、コスト削減ではなく人材確保を目的とする

 国内でのIT人材調達が困難となって、オフショアリングよる人材調達に取り組み始める企業も出てきた。特に企業の認知度が低いなど、人材市場へのアピール力に欠けるIT部門や、グローバルにIT拠点を保有し、日本向けタスクもグローバル拠点に集約可能なIT部門を中心に、人材獲得を目的としたオフショアリングの活用が進んでいる。

 一方、これまで多かったコスト削減が主目的のオフショアリングは、現地におけるコストの急増、日本と比較した場合の品質と生産性の低さや改善スピードの遅さ、IT部門側の管理負担の大きさといった原因により、伸び悩んでいると推察される。そのため、コスト削減を目的とするIT部門の割合は急速に低下し、人材獲得を目的とするIT部門の割合が急速に上昇するであろうと予測している。

2020年までに、非IT部門が単独で進めるITプロジェクト (開発・運用・保守) の80%以上が、結局はIT部門の支援・助力を求めざるを得なくなる

 マーケティング/営業、商品企画、製造などの非IT部門が、デジタル・ビジネス関連プロジェクトなどにおいて、IT部門を関与させずに社外のITベンダーと組んでITプロジェクトを推進するケースが見られるようになってきた。2016年にガートナーが日本企業のIT部門を対象に実施したアンケート調査では、デジタル・ビジネス関連プロジェクトの現状について、IT部門を介さずにデジタル・ビジネスを推進している企業は3割を超えている。この傾向は今後も増えると予想される、一方で、こうした非IT部門の取り組みの危うさを指摘するITリーダーも少なくない。

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