米Avanadeは、2000年にAccentureとMicrosoftの合弁会社として設立された。Microsoftの製品やサービスで企業を戦略的に支援している。来日した最高経営責任者(CEO)のAdam Warby氏は、さまざまな業界で進むデジタル化の流れの中で、デジタル倫理が非常に重要になってくると指摘する。
消費者についても、従業員についても「顧客体験」が重要になってきているとWarby氏。ショッピングのオンライン化が進み、そのときにコールセンターの対応の仕方も変わってくるという。
Avanadeの最高経営責任者(CEO)のAdam Warby氏
いずれにしても「情報がデジタルにつながっていないと結局は良質なサービスを期待できない」。
Avanadeは、オーストラリアの大手総合エネルギー企業のAGL向けに、計測システムを構築した。バラバラに管理されていた50のウェブサイトを、Microsoft AzureベースであるSiteCoreの基盤に統合。結果として、効率性と拡張性が上がり、プラットフォームの安定性やピーク時の処理性能も高まったという。エネルギーを利用する顧客が簡単に料金を支払ったり、口座の入出金を確認したり、引っ越しの計画を立てたりできるようにした。
日本より早い2001年にエネルギー業界の規制緩和が実施されており、AGLは他業界からの参入組との競合を余儀なくされていた。一方で、チャンスも広がると認識しており、差別化と顧客離れの抑制を支える新基盤になっている。
日本でも、日本通運などさまざまな導入実績があるとし、「テクノロジがものごとを良い面に導く」とする。一方で、Warby氏はコントロールの重要性も指摘し、「デジタル倫理が大事になってくる」と強調する。
自動車保険とテレマティックスの関係で言えば、走行状況によって安全運転をする者であるか、そうでないかを把握し、保険料率を変えるといったサービスが提案されている。GPSによって自動車のロケーションや走行速度をトラキングし、緊急サービスの迅速な提供をするといったシナリオがあるが、そうした情報を保険会社の社内で共有するのは、いいことなのかどうか――。
「Can(できる)なのか、Should(やるべき)なのか」。どちらを優先するかの判断には倫理の問題が絡んでくると同氏。また、その懸念を取り越し苦労に終わらせるための法規制にはどんなものがあるのか、などを考える必要があるという。
「妊娠している女性にどんな情報を提供するべきか。その女性はその状況自体を知られたくないかもしれない。価値があると思って始めることにも、予想外の展開があることを想定しなくてはいけない」(同氏)
基本的な感覚として、デジタル倫理を持っているかが大切とする。難しさがある中で求められるアプローチについて、デザインを含む創造性を挙げる。
設計施工のプロセスに創造性を交えた上でイノベーションを実施していくという経験は、多くの企業にとってまだまだ足りないものだとした。
一方、日本市場については「2016年度は27%成長を達成した」とアピール。「16年目を迎えテクノロジ分野の合弁企業として最も成功しており、それに誇りを持っている。今後も成長を目指すが、企業規模は成功についてくるものであり、無理にビッグカンパニーを志向することはない」と述べた。