情報処理推進機構(IPA)は4月27日、重要産業分野の企業などと連携する「サイバー情報共有イニシアティブ」(J-CSIP)の1~3月の運用状況を発表した。2012年度の運用開始後では初めて、標的型攻撃メールとみなされた共有情報がゼロ件だった。
J-CSIPは、サイバー攻撃などの脅威情報を参加組織が共有する体制で、4月27日現在では8業界115組織が参加する。運用状況は四半期単位でIPAが公表している。
J-CSIPの体制(出典:IPA)
3カ月連続で標的型攻撃メールの情報がゼロ件だったのは初という。これまで最も少なかったのは、2015年度と2016年度のそれぞれ第3四半期(10~12月)で19件だった。
しかしIPAでは、2017年1~3月も国内で標的型攻撃の発生を観測。少なくとも10件以上の標的型攻撃メールの着信があり、その一部は2016年以前から続く攻撃だという。このためIPAでは、「標的型攻撃の脅威が衰えたという認識はなく、今も変わらず注意が必要であると考えている」としている。
標的型攻撃メールの観測数は、2015年頃から減少傾向にあり、明確でないものの2つの理由が想定されるという。1つは、攻撃の手口が巧妙化して現状の対策では検知がしにくいというもの。もう1つは、対策による防御効果から攻撃を認知、確保することがなく、共有される情報が発生していない可能性を挙げている。
ただし後者については、防御された大量の無差別型の攻撃メールの中にごく少数の標的型攻撃メールがまぎれていたことも考えられるとし、結果的に防御できても標的型攻撃の兆候を発見しにくくなる恐れがあると指摘する。
過去5年間の運用状況(出典:IPA)
なお、2016年度通期ではIPAへの情報提供件数が前年度比で約10倍増の2505件に達し、過去5年間で最多だった。要因は無差別型攻撃メールの急増にあるが、「ビジネスメール詐欺」(BEC)と呼ばれる犯罪メールが出現するなど、引き続き注意すべきとしている。