ドリーム・アーツは8月2日、次期主力製品「ひびき」のプラットフォームとしてMicrosoft Azureを採用すると発表した。また、既存製品INSUITE/Sm@rtDBの動作プラットフォームとしてもAzureを活用する。ひびきのサービス提供は2018年3月からを予定している。
ひびきは、同社が提供しているWebデータベース「ひびきSm@rtDB」の基本機能を受け継ぐもので、文書管理やワークフロー作成などに関する機能を踏襲し、Azure上で提供されることになる。また、「ひびきSm@rtDB」はそのまま販売され、機能拡充は引き続き実施される。
発表の場に登壇した代表取締役社長の山本孝昭氏は、ひびきについて次のように話す。
「働き方改革に必要なのは、生産性の向上と創造性の向上だ。当社はベースコンセプトとして『良質なアナログ時間の創造』を掲げ、ITによる業務改革支援を続けてきた。Azureを開発プラットフォームとするひびきを利用してもらうことで、業務改革がさらに迅速化し、実際に人に会い、モノに触れ、アイデアを出し合うといったアナログの時間が増え、創造性の高い仕事を優先的に行えるようになる」
「働き方改革に必要なのは、生産性の向上と創造性の向上」と語った山本氏(右)と「Azureとドリーム・アーツ製品の取り合わせは、働き方改革に大いに貢献するはず」とした伊藤氏
ひびきは、Azureが提供する人工知能(AI)やコグニティブサービスと連携するだけでなく、Azureをプラットフォームにしてエコシステムを形成することになる。ひびきに関する開発を手掛けているサードパーティ企業は、同製品に関する新しい機能、知見をアプリケーションとして販売することができるようになる。
山本氏に続いて登壇した、日本マイクロソフト 執行役員 常務 デジタルトランスフォーメーション事業本部長 伊藤かつら氏は、次のように話す。
「『Windowsとofficeの会社』から『クラウドとAIの会社』にほぼ変身することができたマイクロソフトにとって、Azureは未来を託す事業。そのサービスにドリーム・アーツさんが開発プラットフォームとして利用してもらえるのは大変喜ばしい。当社は働き方改革へに真剣に取り組んでおり、その意味でもAzureとドリーム・アーツ製品の取り合わせは大いに期待している」
開発プラットフォームにAzureを採用した理由
ひびきの前身であるひびきSm@rtDBは、数百、数千の数に膨れ上がった各部門のデータベースを統合して効率的な情報共有を行いたい企業や、組織改編などに伴う業務改革を機に、柔軟なワークフロー運用を実施したい企業を主なユーザーとしてきた。ノンプログラミングでデータベースを構築でき、導入期間も1カ月ほどで完了するというのをメリットとして掲げた。
では、そのひびきSm@rtDBの機能や特徴を引き継ぐひびきの開発プラットフォームにAzureを採用したのは、なぜなのか。
ドリーム・アーツ 取締役 CTO(最高技術責任者)の石田健亮氏は次のように指摘。
「Azureを採用した理由は、マイクロソフトのエンタープライズ領域で培ってきた信頼性、企業ID管理のスタンダードとして定着しているActive DirectoryをAzureでもAzure ADとして利用できること、そして、膨大なデータを蓄積・分析することができる豊富なサービス、AIやコグニティブサービスの充実が挙げられる。こうしたメリットを生かし、ひびきは、エンタープライズレベルでの可用性と拡張性と、豊富な現場オペレーション分析が実行可能なクラウドネイティブなサービスとして利用できるようになり、多彩なベストプラクティスをすぐに取り込むことが可能になる」
ドリーム・アーツ 取締役 CTOの石田健亮氏
Azure上でのひびきの活用例として、石田氏は、Azureが提供するAzure FunctionsやBot Framework、Cognitive Servicesなどとの連携を使って説明した。
「ひびきに蓄積した情報を利用して、定期的にある形式のレポートを作成しようとする場合、一般的なクラウド活用では、レポート作成を実行するプログラムを書き、それを仮想サーバ上に置いて活用していた。しかしAzure Functionsというサービスを利用することで、コードを登録するだけで新たにサーバを構築することなく実行できるようになる。タイマー機能で時間を設定しておけば、それをトリガーにしてFunctionsがAPIを通じてひびきの中からデータを抽出し、結果をSQLデータベースに格納するということも可能になる。格納されたデータは、さらにAPI経由で基幹システムと連携することもできるようになる」
また、Functionsを利用することで、ひびき経由でSQLデータベース格納された加工データをマイクロソフトのPower BIなどでさらに分析するといった仕組みも、サーバレスで構築するともできるという。
ひびきとAzureによる連携イメージ
Functionsを中心にした連携は、さまざまなデータ活用の仕組みを迅速かつ容易に構築できるメリットがあるようだ。FunctionsとAzure Cosmos DB、そしてAzure Machine Learningを利用することで、ひびきに入ってくるデータから、異常値を検出し、チャットシステムにプッシュ通知するといって仕組みも構築可能だ。
「Cosmos DBは、どんなデータも格納してグローバルでスケールできるスキーマレスのデータベースサービス。これを利用して、ひびきからFunctions経由で、あるデータを格納していき、それらをMachine Learningで異常値を検知させ、チャットシステムでアラートを流すということもできる」
石田氏は、メールよりもコミュニケーションのスピードを迅速化させるチャットシステムは、これから、ビジネスユースでさらに拡大していくと強調。ドリーム・アーツでも、「知話輪」という製品を提供中だ。
Azureのサービスの1つであるBot FrameworkとCognitive Servicesを活用して、チャットシステムで書き込まれたデータをBot Frameworkに取り込み、Cognitive Servicesでメッセージを解析してひびきのデータとして登録するということもできるようになる。