業務アプリケーションの成長を促すプラットフォーム戦略
ドリーム・アーツでは、「BaaS」という言葉を使ってひびきをプラットフォームにしたアプリケーションのエコシステムを説明している。
「BaaSというのは当社が作った造語だが、BestPractice as a Serviceという意味だ。業務システム関連のアプリケーションは、世界中にあふれているが、ひびきで形成するエコシステムは、それらの中から、ユーザーにとって最良なベストプラクティスを提供できるアプリケーションを流通させていきたい」(山本氏)
ひびきは、前身であるひびきSm@rtDBで長年培ってきたベストプラクティスを引き継いでおり、これらの機能をAzureの開発プラットフォームによって再整理することで、従来のベストプラクティスとAzureのサービスとをAPIでスムーズに連携しやすくなる。
ひびきを自社のクラウドで独自の開発手法によって展開し、Azureと外部連携させる、あるいは、オンプレミスのシステムでひびきを稼働するようにして、そのシステムとAzureを連携することも可能だ。しかし、多様なユーザーがさまざまに工夫をして利用する業務アプリケーションと、パブリッククラウドのサービスとを連携させる際、さまざまな不具合や問題が発生する可能性がある。ならばひびきを「Azure仕様」とし、そうしたストレスをユーザーに負わせず、ノンプログラミングでさまざまなアイデアを利用できるようにした方が、ユーザーのメリットは拡大しやすい。
また、ひびきを「Azure仕様」とすることで、Azureを利用するユーザーをひびきのユーザーに呼び込みやすくなり、さらに、将来新しく提供されるAzureの機能や、他社がAzure上で開発したアプリケーションも利用しやすくなる。
山本氏は「よほどの先端分野なら別だが、テクノロジの多くはコモディティ化しており、それらでビジネスに大きな差をつけることは難しい。ならば、積極的にベストプラクティスとされる機能を取り入れ、業務の標準化のレベルを上げていくことを目指すべきだ」としている。
AIによる分析機能なども、すでにコモディティ化しつつあり、必要なのは、複数の同種のサービス機能からもっともすぐれたものを選び出せるかどうかということなのだろう。
ドリーム・アーツの今回の取り組みの背景には、流通・小売業向けに提供されている本部・店舗間のコミュニケーションサービスである「Shopらん」の成功が挙げられるのでないか。クラウドで展開される同サービスでは、ユーザーによる多くのトライの中から生き残った現場のベストプラクティスをすぐに利用できるようにしている。
そうしたトライの多くは、ユーザー企業の業務部門とドリーム・アーツが共同で試行錯誤する中で生まれてきたものだ。こうしたSaaSは、PaaSとして成長させてサードパーティなどを呼び込み、自社だけでは開発しきれない新しいサービスを次々と提供することで、競合との差別化を図るのが理想的な展開だ。
以前、山本氏にこのことをたずねた際、PaaSとして業務アプリケーションを展開するには、グローバルで多数のユーザーを抱えていれば別だが、それ以外のケースでは、そう簡単にはいかないとしていた。その意味で、今回のドリーム・アーツのチャレンジは、進化を続ける業務アプリケーションをプラットフォームとして発展させるために選んだ「ベストプラクティス」だったといえるかもしれない。