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自治体サバイバルの切り札としてのクラウド--米ZohoのベンブCEO

怒賀新也 (編集部)

2017-10-19 11:40

 静岡県川根本町に、SaaS提供企業である米Zohoがサテライトオフィスを設立した。静岡県の川勝平太知事は、米Zohoの最高経営責任者(CEO)を務めるSridhar Vembu氏とディスカッションし、人口減少を背景とする地方創生への要求への回答として、クラウドが一役買うことで、意見の一致を見たという。

 Vembu氏が静岡にサテライトオフィスを設立したのは、現地雇用を含め、地方の再生による経済効果が見込まれ、それを事業につながる際のパイロットケースにしたいという思いがあったからだ。

 「私自身もインドの地方出身者であるためそうした取り組みに興味があった」(同氏)

待ったなしの地方サバイバル

 日本の人口減少は8年連続。2016年の30万8084人の減少は過去最多で、出生数は初めて100万人を割った。人口が増加しているのは、東京、千葉、埼玉、神奈川など首都圏が中心となっている。

米Zohoの最高経営責任者(CEO)を務めるSridhar Vembu氏
米Zohoの最高経営責任者(CEO)を務めるSridhar Vembu氏

 減少の流れを止める術は今のところない。川根本町の現在の人口は6500人。それに対して出生者数は20人にとどまる。「全員が将来的に町に残ったとしても、人口は1000人を切ってくる計算になる」(Vembu氏)。他地域も例外ではなく、今後地方自治体がそれぞれ生き残りのレースを繰り広げざるを得ないことを示唆しており、Vembu氏は「何か手だてを講じるべきだ」と話している。

 ITベンダーであるZohoとして打ち出すのはクラウドという解決策だ。政府が作り出している働き方改革や地方創生の流れに乗った部分もあるだろう。

 川根本町の地元の雇用を生み出しながら、「Zoho社員の20%を同町に置く」との構想もある。「育児中の女性に仕事の能力がないわけではなく、1時間かけて通勤する時間がないのである。自宅で3、4時間の労働をしてもらうというのは理にかなっている」(同氏)

 背景として、Vembu氏はさまざまな場面で仕事の質が変わってきていることを挙げる。知的労働が増え、コンピュータがあれば場所を問わないような業務が増えている。チャット、文書ツール、動画の埋め込み、リアルタイムコミュニケーションなど、人対人の対話が距離にかかわらず可能であることが共通認識になりつつある。それならば、場所を問わずビジネスを遂行できる環境が、これから本格的にやって来るという考え方だ。

 「私自身、ヨガを習っているが、インストラクターはインドにおり、私は米国にいる。それでビジネスが成立している」

「いろいろ先進国」日本に注目

 Vembu氏との話で、1つ気になる言葉があった。「実験場としての日本」である。

 「(1980年後半から90年代前半の)日本のバブル経済の発生とその火消しの方法について、世界中がその愚かさを指摘する時期があった。だが、その後、同じ事が欧米を含めて世界中で起きたことで、日本の対応の歴史が改めて注目を集めた」(同氏)

 経済については、90年代初頭の不動産に端を発したバブルにおいて、金融融資引き締めによる金融機関の破綻といった結果もあり、現在のような日銀による国債買い占めによる歴史的緩和でも、物価目標2%達成が実現していないなど、うまい話にはなっていないように見える。

 だが、経済の観点に限らず、少子高齢化も同じだと同氏は指摘する。「日本だけでなく、欧州、中国、インドでさえも今後高齢化の道を歩むことになる。「少子高齢化でも先頭を行く日本の取り組みがどのように功を奏すのか、あるいは失敗するのかを世界が注目しているのだ」とVembu氏は話している。

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