ペルソナの限界
顧客体験を設計するプロセスでは、膨大なビッグデータから分析した顧客分析によってペルソナを作成し具体的な想定ユーザー像を具体化してきました。しかし、そのようなカスタマイズされた具体的なユーザーを想定した分析プロセスが、ネット時代の変化するトレンドや急速なテクノロジの発展による劇的な変化についていくのが難しくなってきました。
ちなみに、ペルソナの語源は古典劇で役者が使った仮面のことであり、自己の外的側面という意味を持っています。そういう意味では、急激に変化する未来、多様化したミレ二アル世代の分析では、役者のペルソナを超えて人間としての分析まで必要な時代になってきたのかもしれません。
ディスラプション
ペルソナでユーザーの現状分析から先を読むのが難しくなった背景には、現状のさまざまな常識が崩壊(ディスラプション)していることがあります。デジタル時代の象徴はディスラプションであると言えるかもしれません。
このディスラプションを理解するには、第一回で少し触れたミレニアル世代の思考法を無視することはできません。幼少期からパーソナルコンピュータが身近にあり、インターネットを使える環境にいる世代。ディスラプターはビジネスの主戦場でも暴れまくっています。Uber Technologies、Airbnbがそうしたディスラプターの代表格ですが、ほんの一例であり、枚挙にいとまはありません。
ディスラプターが登場した当初は、規制や商慣習が存在しているという理由で、大企業は存在を軽視していましたが、ディスラプターの発想の斬新さ、その成長は予想を大幅に超え、業界や既成概念の垣根をさらに超え、その自由な発想で他の業界も巻き込んだ大きな変革の台風の目となる様相を見せています。
ミレニアル世代は、1980年代から生まれたインターネット時代の申し子たちです。注目すべきは、彼らがライフスタイルに重きを置き、既存の価値観、既存の就職形態にこだわらない自由な発想を持つことです。彼らは直感的発想を重視し、「面白い、便利だ」と思ったら先入観なく、投資のかからないクラウドなどの最新技術を駆使し、発想を実現していきます。実際にここからホテル業界、タクシー業界、金融業界などを脅かす事業が生まれてきているのです。
実は、このミレニアルの直感的な発想から生まれるサービスこそが、UXを超えたエクスペリエンスの重要な部分です。つまり、先の読みにくい時代と世代を見極め、どうワクワクする体験に持ち込むか。そこで重要になってくるのがエクスぺリエンスなのです。
Peace out,
- 松永 エリック・匡史
- 青山学院大学 地球社会共生学部 教授
アバナード株式会社 デジタル最高顧問
青山学院大学国際政治経済学研究科修士課程修了 - イノベーションをリードするデジタルコンサルティングの草分けであり、バークリー音楽大学出身のプロミュージシャンという異色の経歴を持つアーティストとしても活躍。コンサルタントとして、アクセンチュア、野村総合研究所、日本IBM、デロイト トーマツ コンサルティング メディアセクターアジア統括パートナー(執行役員)、PwCコンサルティング合同会社 デジタルサービス日本統括パートナーを経て現職。近書は「外資系トップコンサルタントが教える”英文履歴書完全マニュアル”」。