野村総合研究所(NRI)は、自社のIT基盤サービスについて、今後の技術戦略を説明した。バックオフィスやサービスを支える「コーポレートIT」と、スマホなどのアプリケーションをはじめとした、ITがサービスそのものになる「ビジネスIT」の2つに大きく分け、人工知能(AI)やセキュリティ、ITソリューションインフラ、生産性向上、オープンイノベーションなど、具体的な事業について焦点を当てて紹介した。
特に、ITソリューションインフラ領域におけるマルチクラウド化が今後のカギになると、NRIの常務執行役員、IT基盤サービス担当生産革新本部長の綿引達也氏は話している。
NRIの常務執行役員、IT基盤サービス担当生産革新本部長の綿引達也氏
全てのインフラを束ねる高度な統合運用サービスを提供するという同社。データセンター、ネットワークサービス、「NRI Cloud」によるクラウドサービスなどを統合し、自社サービス「Senju/DC」とそのクラウド版として海外市場を意識して提供する「mPlat」を軸に、マルチクラウドを運用管理できるようにすることで、複雑化する企業のITインフラ管理を単純化できるようにする。
「今後はパブリッククラウドベンダーと連携して、NRIのデータセンターと各パブリックを、専用線を引いた上でダイレクトコネクトできるように働き掛けていく」と同氏。
現状、NRIのパブリッククラウドの担当エンジニア数の比率は、Amazon Web Serices、Microsoft Azure、Google Cloud Platformでおおよそ7:2:1と、圧倒的にAWSが多いという。AWSのノウハウが溜まっているのが実情だが、「事情によりAWSを採用できない」とする企業もあるとのこと。AWSからAzureへの移行などのニーズもあり、mPlatをAzureに対応させると3月に発表するなど、取り組みを進めている。
また、今後はハイブリッドクラウドにおいて、コンテナサービスが本格的に使われるとの声が聞かれる中で、RedHat OpenShiftを金融システムに適用した。DockerおよびDockerをホストし、スケールアウトを可能にするKubernetesにも、対応予定としている。
AIソリューション「TRAINA/トレイナ」に一本化
NRIは同日、2001年から提供してきたテキスト解析ソフトウェア「TRUE TELLER」を、知識ベース型の人工知能(AI)ソリューション「TRAINA/トレイナ」に統合すると発表した。これまでTRUE TELLERとして、テキストマイニング、顧客の声を集めるポータル、FAQ、音声認識/対話要約などの機能を提供してきた。今回、TRAINAの文字中にある「AI」にフォーカスし、ロゴの作成とともにブランド統合する。
TRAINAは2016年7月に提供を開始した対話型AIだ。チャット型のインターフェースに問い合わせが寄せられると、過去の対応履歴などの知識データベースを参照して、問い合わせしてきた人のニーズに合った回答をすぐに作成する。窓口担当者を支援したり、自動返信したりするサービスだ。回答を提供するためには、窓口担当者やシステムとのやり取りの文脈から、ユーザーが最終的に求めるものを把握し、的確な質問や回答を返すなど、複雑な対話能力が要求されるという。