米国の入国審査官が、10年以上にわたって渡航者の電子パスポートを適切に検証できていなかったことが分かった。その原因はソフトウェアだ。
この問題は、上院議員の当局に対する質問書簡で明らかになった。Ron Wyden上院議員(民主党、オレゴン州選出)とClaire McCaskill上院議員(民主党、ミズーリ州選出)は、米税関・国境警備局(CBP)のKevin K. McAleenan長官代理に回答を求める書簡を送った。
電子パスポートには、機械で読み取り可能なテキストと、保護のための暗号情報を収めたICチップが埋め込まれており、パスポートの信頼性や情報の完全性を簡単に検証できるようになっている。暗号情報によってパスポートの偽造はほぼ不可能であり、盗難への対策も容易だとされている。
2007年に導入されて以来、米国で新たに発行されるパスポートはすべて電子パスポートになっている(訳注:日本では2006年から導入)。ビザが免除されている38カ国の国民が米国に入国する際には、電子パスポートが必要だ。
しかし、米国時間2月22日に送付された上院議員の書簡によれば、入国審査官は「電子パスポートのチップを検証する技術的手段を持っていない」という。
出入国が行われるほとんどの空港や港には電子パスポートの読み取り装置が配置されているが、「CBPは電子パスポートのチップに保存されている情報を検証するのに必要なソフトウェアを持っていない」と書簡にはある。
「具体的には、CBPは電子パスポートに保存されている電子署名を検証することができず、これはCBPがスマートチップに保存されているデータが改ざんを受けていたり、偽造されたりしていないかを判断できないことを意味している」(同書簡)
Wyden氏とMcCaskill氏は書簡の中で、CBPはこのセキュリティの問題について少なくとも2010年には把握していたと述べている。
この年、米政府監査院は、CBPの主務官庁である米国土安全保障省が「データを信頼するにあたって必要な、国家が生成した電子署名を完全に検証する機能を実装していない」とする報告書を公開している。
報告書では、国土安全保障省がこの技術を実装しない限り、入国審査官は「電子パスポートのコンピュータチップに収められているデータが、不正な手段で変更されたり、偽造されたりしていないという正当な保証を得られない状態が続く」だろうと述べられている。
上院議員らは、それから8年経ったにもかかわらず、「CBPは依然として、電子パスポートの機械読み取り可能なデータを検証する技術的手段を持っていない」と述べている。
米ZDNetは税関・国境警備局に取材したが、コメントは得られなかった。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。