本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、NECの藤巻遼平 主席研究員(米dotData CEO就任予定)と、日本オラクルの原智宏 執行役員の発言を紹介する。
「データサイエンスの“民主化”を図りたい」
(NEC 藤巻遼平 主席研究員/米dotData CEO就任予定)
NECの藤巻遼平 主席研究員(米dotData CEO就任予定)
NECが先頃、米シリコンバレーに人工知能(AI)でデータ分析のプロセスを自動化するソフトウェアを開発・販売する新会社「dotData」を設立したと発表した。NECデータサイエンス研究所の主席研究員で、dotDataの最高経営責任者(CEO)に就任する藤巻氏の冒頭の発言は、その発表会見で、新たな取り組みにおける究極の狙いを述べたものである。
藤巻氏はdotDataのコア技術となる「予測分析自動化技術」の開発者で、2015年にNECで最年少(33歳)の主席研究員に就任した。予測分析自動化技術は、熟練のデータサイエンスが膨大な時間をかけて人的に行っているビッグデータの特徴量設計、予測モデル設計などの高度な分析作業をAIによって完全自動化するもので、データ分析にかかる時間を圧倒的に短縮することができるという。
dotDataのミッションは、誰もがデータを分析し、より良いサービスやプロダクトを生み出すことができるようにすることだ。藤巻氏はこのミッションを端的に表現する形で「データサイエンスの“民主化”」と語った。そして、「そもそもAIという技術を使うのが難しいので、データサイエンティストが求められている。そうしたデータ分析が誰でもできるようになるかというと、そこには大きなギャップがある。dotDataはそのギャップを埋める役割を果たしていきたい」と意気込みを語った。
発表会見の詳しい内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは、なぜdotDataが米シリコンバレーにおいてNECから独立する形でスタートするのかという点に注目したい。藤巻氏はこの点について、次の3つの理由を挙げた。
1つ目は「競争」。厳しい競争環境と、そこで洗練されるニーズにもまれながら、ビジョンをプロダクトを育成したいという。2つ目は「人材」。世界から集まる卓越した優秀な人材を、スタートアップとしてのインセンティブを活用しながら獲得したいとしている。3つ目は「スピード」。迅速かつ柔軟な意思決定を可能とし、成長速度を最大化することで事業価値を高めたいとのことだ。
藤巻氏は会見で、黄色いシャツにオレンジのパーカーを羽織ったカジュアルなスタイルで登壇。スーツにネクタイ姿のNECの藤川修 執行役員ビジネスイノベーションユニット担当や、森英人ビジネスイノベーションユニット エグゼクティブ・ディレクターと同席する中で、ひときわ異彩を放っていた。NECが繰り出したこの新プロジェクトは、果たして奏功するか。注目しておきたい。
NECの藤川修 執行役員(左)および森英人エグゼクティブ・ディレクター(右)とともに会見に臨む藤巻氏