機械学習の特徴量抽出設計を自動化、NECが北米に新会社設立

國谷武史 (編集部) 2018年04月26日 14時29分

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「dotData」のCEO就任を予定するNEC 主席研究員の藤巻遼平氏

 NECは4月26日、機械学習での特徴量の抽出設計を自動化する技術を確立したとして、同技術を世界展開するための新会社「dotData」を米国カリフォルニア州に設立すると発表した。同社主席研究員 工学博士の藤巻遼平氏が、最高経営責任者(CEO)に就任する。

 記者会見した藤巻氏によると、特徴量の抽出設計については機械学習でのデータ学習モデルを開発する上で重要な部分を占める。現状では、その作業を「データサイエンティスト」と呼ばれる技術者のスキルやノウハウ、感性などに依存せざるを得ず、労働集約的な業務となっており、人工知能(AI)普及のボトルネックにもなっている。

 藤巻氏は、東京大学工学系研究科を修了した2006年にNECに入社。北米を拠点に機械学習のアルゴリズムを中心とする研究開発に従事し、2015年にNECで最年少の主席研究員に就任した。データサイエンティストとしての活動と同時に、事業開発などビジネススキルも身に付けてきたという。

 dotDataの強みとして藤巻氏は、特徴量の抽出設計にAIを利用してこの作業を自動化する点にあると説明する。2016年12月から三井住友銀行が協力して進めてきた実証実験では、数カ月を要した特徴量の抽出設計を1日以内に短縮できる成果が認められたという。これによって、機械学習モデルを運用するまでのリードタイムが大幅に改善されると同時に、データサイエンティストの活躍領域を広げることになり、AIの汎用化に道筋を付けられるとしている。同氏は、「データサイエンスの『民主化』につながる」と述べた。


新会社とNECのビジネススキーム

 NEC 執行役員 ビジネスイノベーションユニット担当の藤川修氏は、dotDataを設立する狙いについて、AI活用の現状を打開する可能性のある技術と人材の場をNEC社内ではなく新会社とすることで、グローバル市場で戦えるビジネスを生み出すことにあると説明した。NECはdotDataの技術を国内で独占展開する権利を持つが、新会社の資本にはNECだけなく、世界のベンチャーキャピタルの参画も呼び掛ける。事業目標としては、2022年度の段階でdotDataの企業価値を500億円規模にするという。

 NEC側でdotData関連事業を担当する責任者には、日本IBMや日本テラデータでアナリティクス関連事業をけん引した森英人氏が、2月にビジネスイノベーションユニット エグゼクティブ・ディレクターとして就任した。森氏は、「特徴量の抽出設計の自動化技術は必須であり。AIは北米が先行しているが、私の知る限りでこれを実現したところはまだない。NECからこの技術でグローバル進出したいと要請があり、これまでの経験をぜひ発揮したい」とコメントし、今回の発表は「世界のAI業界を仕切る米国に日本のNECが反撃するものだ」と強調した。


特徴量の抽出設計の自動化における実証実験例

 森氏によれば、dotDataの技術の活用が期待される領域は、既にAIの実用化が進む人間との対話といったソリューションではなく、極めて精度の高い受注予測を行うといった企業の基幹業務領域だという。NECでは、AI活用を検討する顧客企業に対し、業務課題の洗い出しからデータ分析のユースケース、予測モデルの検討、機械学習によって提供される知見のビジネス適用を担い、dotDataは学習対象とするデータの準備や特徴量の抽出設計と学習アルゴリズムの開発、運用を担う。

 dotDataの目標とする「企業価値500億円」に関して森氏は、「どのように達成するかは藤巻氏らの判断だが、株式の上場や他社への売却などいろいろな可能性がある」とコメント。NEC関連事業だけでなく、他社への技術提供などを含めた多角的なビジネスモデルを検討していくとしている。


NEC 執行役員 ビジネスイノベーションユニット担当の藤川修氏、藤巻氏、ビジネスイノベーションユニット エグゼクティブ・ディレクターの森英人氏(左から)

(※記事訂正・・・初出時に藤巻氏の肩書きが「主任研究員」とありましたが、正しくは「主席研究員」となります。お詫びいたします。)

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