機械学習の自動化プラットフォーム「DataRobot」を展開するDataRobot Japanは5月31日、「DataRobot×パナソニック トークセッション~日本の製造業におけるAI利活用の最前線~」と題したイベントを都内で開催した。
DataRobotはエンタープライズ向けの機械学習プラットフォーム。本来であればデータサイエンティストが設計しなければならない機械学習プロジェクトのワークフローを大幅に自動化し、作業を効率化する。同社は「AIの民主化」をスローガンに、スキルレベルを問わず誰もが高精度なAIモデルを生成できる環境を目標としている。
当日はパナソニック ビジネスイノベーション本部 AIソリューションセンター 戦略企画部 部長の井上昭彦氏を招き、同社におけるAI活用などについてDataRobot Japanのチーフデータサイエンティストであるシバタアキラ氏が質問する形で進行した。
トークセッションに臨む、パナソニックの井上昭彦氏(写真左)とDataRobot Japanのシバタアキラ氏(同右)
トークセッションに先立ちあいさつを述べたDataRobot Japan ゼネラルマネージャーの原沢滋氏は、同社が2017年1月に日本オフィスを構える前から井上氏とAIの社内業務への組み込み方や社内推進などについて話をしていたことを紹介。「AI推進のためには、教育が重要。どういった方々に使わせていくのか、どうやってその方々にAIを理解してもらうのかは重要なポイントとなる」と語った。
DataRobot Japan ゼネラルマネージャー 原沢滋氏
パナソニックのAI活用を支える“リベンジ”への思い
この日トークセッションに臨んだ井上氏は2000年にパナソニックに入社後、携帯電話向け画像処理LSIの開発、家電統合プラットフォーム「UniPhier」など半導体の設計開発を担当。その後、デジタルカメラ「LUMIX」の画像認識の研究開発を担当したことからAI関連技術に関わるようになり、全社AI強化の戦略を担当した。現在はAIソリューションセンターの戦略企画部長を務めている。顔検出ひとつをとっても条件がコンフリクト(競合)するなど従来型の機械学習に限界を感じながら設計をしている中で、ディープラーニング(深層学習)が出てきた際には、実感を持ってその凄さを感じたと振り返った。
パナソニック ビジネスイノベーション本部 AIソリューションセンター 戦略企画部 部長 井上昭彦氏
手始めにシバタ氏から、パナソニックが同業他社よりもAI活用などで新しい試みができている理由について問われると、井上氏は「経営層も含めてIoT時代に“リベンジ”したいという思いがあった」と回答。「20世紀の工業化時代には白物家電やデジタル家電で成功していたが、21世紀のインターネット時代にあっては、ものづくりに最適化された企業の形から脱却できず勝てなかった」と振り返り、ビジネスを変革する思いと、第三次AIブームが訪れてAIを活用する話が一緒になって進んだというのが大きいと語った。
パナソニックは2016年に「技術10年ビジョン」を策定。IoT/AI/ロボティクス領域と、エネルギー領域を2本柱として全社で注力すると決めた。社内におけるAIの活用法について井上氏は「新しい事業に対するAI活用」と「既存の業務プロセスを効率化するためのAI活用」という2つの方向性を列挙。
そのためのAI推進体制については、技術10年ビジョンを策定した際に少人数でAI強化推進室を立ち上げ、1年半ほど人材育成を進めという。その後、各事業所やカンパニーでデータがたまってきたため、AIソリューションセンターを立ち上げて人材育成とともに新たなビジネスやソリューションの提供を行っているという。現在は100人ほどという同センターの人員のリソース配分については「新規事業が8割、業務の効率化が2割程度」と述べた。
パナソニックでは2022年までに1000人のAI人材を育成することを目標として「育成プログラム」を提供しており、2017年度末で300人の育成が終わった状況にある。受講者が年100~200人程度であることから、計算上は間に合わない可能性もあるが、受講生自身が同部署の人間を教育することもあるため、トータルでソリューションのできる人材増を狙っているという。
DataRobot Japan チーフデータサイエンティスト シバタアキラ氏