独立行政法人情報処理推進機構(IPA) 技術本部 ソフトウェア高信頼化センターは6月19日、「AI社会実装推進調査報告書」を公開した。
この報告書は、AIの利用状況およびAIに関する制度・政策を調査したもので、産学官の有識者からなるAI社会実装推進委員会が行った。調査期間は2017年11月〜2018年2月。
内容は、AIの利用動向・制度政策動向に関する調査結果(文献/アンケート/ヒアリング)と、AIの社会実装課題を抽出・整理・分類し、対策の方向性を策定したもので構成されている。
アンケート調査では、課題のうち、「AIの理解が不足している」ことが突出しており、適切な情報提供や人材育成の必要性がうかがえる。またこのことは、複数のAIベンチャー15社に対して行われたヒアリングでも同様の傾向が見られた。
なおアンケートの対象は、経済産業省 情報処理実態調査で対象となっている。26業種の製造・非製造の事業者の中から無作為で抽出した5000社。有効回答数は364件。
AIに関する課題(アンケート調査)
また、文献調査では、AIと現行法との整合(自動運転に合わせた法制度など)、AI用学習データや学習済モデルの知的財産権などの法制度課題に関する各省庁の検討状況を調査し、整理した。
委員会では、これらの調査に基づき、AIを社会実装していく上での主な課題を以下のように整理した。
- ユーザや社会に係る課題(AIの理解、社会受容性、AIと人との協調)
- 国際課題(国際競争力、データの流通)
- 開発に係る課題(AI人材の育成、学習環境、学習データ・学習済モデルの流通)
- AIの特性に係る課題(AIシステムの検証性、AIシステムの安全性、AIの精度)
- 法制度に係る課題(AIと法制度、個人情報・プライバシー)
さらに、これらの課題に対する取組みとして、「AI開発のエコシステムを活性化する」「AIのリスクと安全性を考える」などの8つの「社会実装推進の方向性」を策定している。その方向性から、実装をスピードアップするために、相互の関係や全体像を念頭に置きつつ、可能な部分から取り組むことが必要としている。
AI社会実装推進の8つの方向性の関係