選挙というのは、民主主義社会を支える重要な柱の1つだが、投票プロセスは、インターネットの力が強大になっていくとともに、ますます脅かされるようになってきている。
電子投票で用いられる投票ブースをめぐってはセキュリティ上の懸念が存在しており、ハッキングやサイバー攻撃に対する脆弱性がリサーチャーらによって警告されてきている。そうした脆弱性が悪用されれば、選挙に対する信頼性が根底から覆されかねない。
一部の人々は、選挙におけるセキュリティの強化や、精度、効率の向上を目的として、ブロックチェーン技術の実装を主張している。
ブロックチェーンとは、取引の記録後は関係者全員の同意なくしては変更できないようにした、中央集権的な要素を排した分散型電子台帳だ。そして、台帳に記録された内容の順序を確定するには膨大な数のネットワークノードからの合意を得る必要がある。
ブロックチェーンの最も有名な応用事例がビットコインの取引だ。しかしその他にも、医療記録の格納から、物理的な商品取引の認証に至るまでのさまざまなユースケースに広がってきている。そして、政府機関がブロックチェーン技術の潜在的なユースケースを調査するほどまでに興味が高まっている。
ブロックチェーンの利用と選挙に関する事例についても報じられている。3月に実施されたシエラレオネ共和国の大統領選挙では、スイスに拠点を置く企業Agoraが国際監視団として選挙の開票作業に参加し、ブロックチェーン台帳を用いた開票作業がどのようになるかという実験を、実際の開票作業とは独立したかたちで実施したという。
ただこれは、ブロックチェーンベースの選挙に向け、その実現可能性を探るための実験とでも言うべきものであり、実際の開票作業に使用されたわけではない。ブロックチェーンは投票ではなく、そのセキュリティを検証する目的で用いられたのだ。