座談会@ZDNet

RPAの導入課題から運用責任、未来予想まで--ベンダー座談会(後編)

阿久津良和 藤本和彦 (編集部) 2018年10月01日 06時30分

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 RPA(ロボティックプロセスオートメーション)が国内で知れ渡るようになってはや数年がたつ。労働人口の減少対策や働き方改革の文脈から多くの企業が導入を試み、成功事例は枚挙にいとまがない。だが、上層部からRPA導入の指示を受けたIT部門もしくはユーザー部門の担当者は、あまたあるRPA製品の中からどうやって選べばいいのだろうか。

 今回はRPAベンダーのRPAテクノロジーズ、NTTデータ、日本IBMの各担当者を集め、RPA導入にまつわる座談会を開催した。前編と後編に分けて紹介する。参加者は次の3人。

参加者

  • RPAテクノロジーズ 大角暢之氏(代表取締役社長 兼 最高経営責任者)
  • NTTデータ 中川拓也氏(社会基盤ソリューション事業本部 ソーシャルイノベーション事業部 デジタルソリューション統括部 RPAソリューション担当 課長)
  • 日本IBM 中村航一氏(IBMクラウド事業本部 クラウド・テクニカル・セールス シニア・コンサルティング・ITスペシャリスト)

前編はこちら

--RPAの全社展開時にIT部門が旗を振るべきか? どの部署が統制するのがベストか?

中村氏:ある顧客のIT部門責任者はRPAの全社展開を望んでいたため、管理方法を強く提案したところ、それに同意しつつも「ガチガチに固めるとRPAの良さがなくなってしまうのでは」と懸念した。最終的には必要最小限のルールを設けてから、各ユーザー部門へ自由に使わせているという。

 日本IBM IBMクラウド事業本部 クラウド・テクニカル・セールス シニア・コンサルティング・ITスペシャリスト 中村航一氏
日本IBM IBMクラウド事業本部 クラウド・テクニカル・セールス シニア・コンサルティング・ITスペシャリスト 中村航一氏

 また、ある生命保険会社はユーザー部門がロボットを公開していたものの、最後には白旗を揚げてしまった。ロボットの利用は構わないが運用保守までの管理は厳しく、IT部門が尻拭いをするケースは現実に起きている。その結果、ユーザー部門によるロボット公開の是非という意見が出るのだろう。少なくとも現状は線引きできていない。

中川氏:安全性を考えると、究極的にはRPAをやめてしまうのがベスト。だが、システムでしきい値を設定すれば、前編で紹介したの例のように10万円が8000円になるといった部分は例外として処理できるはず。そこは人が拾えばいい。IT部門の責任範囲まで考えると、線引きをするのは難しい。ユーザー部門の作業を軽減するために努力してきたIT部門が、ユーザー部門のミスを負うべきなのか。

--トラブルが起きたらIT部門が責められる、という過去の経緯がある。管理の把握は別にして、責められたくないという意見を否定できない。

大角氏:全体的な視点を持つべきだ。RPAには経営技術という観点がある。個人的な類推解釈だが、以前の工場はブルーカラーが働く場所だったが、現在はファクトリーオートメーション(FA)で産業用ロボットが代替するようになった。工場と同じように、RPAはホワイトカラーを代替する経営技術として見るべきだ。社員は人事部、ITはIT部門。そこにRPAを当てはめるのはナンセンス。新しいリソースとして専任部署などを設けた方がいい。

中村氏:派遣業務というのがそのモデルだと思う。上述の生命保険会社も事業部側でのRPA対応を試みたが保守運用が難しく、IT部門で巻き取ろうとしても不可能だった。このような事業部側の希望に対して、IT部門なのか新たな組織なのかは別にして、ロボットを開発・管理して派遣する。そこから収益を上げるビジネスモデルは日本でも始まっている。

大角氏:99.99%の品質でリリースすることをゴールに掲げるのがIT。RPAは人事採用と類似し、採用(導入)がスタートしている。また、段階的に業務を教えていくイメージのため、アプローチが異なる。この差異がRPAの課題であり、幻滅期といわれる理由だろう。

 最近ある金融系企業が、ロボットに基幹システムのログインIDを持たせるかという話になったものの、その企業のITポリシーではNGだった。だが、ロボットを動かすために社員のログインIDを使うのはそぐわないので、ポリシーを変えようと3カ月ほど話がこじれたが、最終的に頭取の鶴の一声で決まったという。IT部門の方から見ればポリシー変更というのは受け入れがたい話なのは分かる。トップダウンでロボットを人と見なすような変革が必要だ。

--ロボットを人と同じように管理するとなるとRPA単体では難しい。BPMや他基幹とつながりなど、全体最適から考えるとシステム再設計まで必要になりかねない。どのように進めていくべきか?

RPAテクノロジーズ 代表取締役社長 兼 最高経営責任者(CEO) 大角暢之氏
RPAテクノロジーズ 代表取締役社長 兼 最高経営責任者(CEO) 大角暢之氏

大角氏:現在のBPMとワークフローは、人とITを前提とした2つのリソースを管理しなければならないが、RPA導入後にパフォーマンスは一気に上がる。だからこそ、人とIT、RPAの管理が強く求められているのではないか。別の観点から見れば、人=ロボットという数式が成り立つため、アルゴリズムやOCR、Excelマクロのようなツールを武器としてロボットに持たせれば、多様な技術がつながり可能性は広がる。

中村氏:まさに、そのコンセプトが弊社のソリューションだ。RPAの観点から見れば「手」に相当するかと。さらにデジタルレイバーという文脈では、OCRが「目」、カンバセーションが「耳・口」に当たる。そして取り込んだデータを知識として蓄積するコンテンツマネージャや、知識を使って判断する「脳」はルールエンジンや、直感であればAI技術が相当するだろう。このように業務を制御しながら、人とIT、ロボット全てを管理するのがわれわれのBPMソリューションだ。

 進め方という観点では、目の前の大変な手作業をRPA化する前に、一段引いて業務全体を見て、整理しようと提案している。各所の課題が見えてくれば、全体のロードマップを引いた上で個別の課題、やがて全体の最適化につながるだろう。どの顧客も頭の中ではやっているものの、ロードマップで整理するのが重要だと考えている。

中川氏:ツールとロボットと人が混ざり合う中で、制御をするのがBPMの役割。弊社もRPAとBPM/ワークフローを組み合わせて、業務全般の自動化を実現する「IM-RPA」を推奨している。例えば、RPAで効率化して余った人材を他の業務に投入するなど、全体最適化も容易だ。人的処理もBPM側で管理可能になるため、人を含めた最適化ツールとして評価してもらっている。

 ここは意見が分かれるところだが、弊社は当初からのBPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)化を推奨していない。例えば、BPRは資金も体力も必要で、現場のやらされている感や、過去を否定されたように感じる顧客も少なくない。そのため見える部分を自動化するRPAから着手し、その結果明らかになった課題をつなげて自動化する、リエンジニアリングを推奨している。予算も現場の対応も顧客によって異なるため一概に言い切れないが、一歩一歩着実に改善が進む。

--BPMなど周辺を含めると、RPA導入の対応はやはりIT部門が担うべきか?

中川氏:われわれが顧客によく話すのが「コーチング」。IT部門がコーチを担い、実行するのはユーザー部門の現場。IT部門はガイド(コーチ)にとどまり、深く関わらないのが理想だと考える。面白いのは、大規模システムになるとわれわれも顧客業務の把握が難しいものの、そこのIT部門も現場業務を理解しきれていないケースは珍しくない。

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