日本IBM 取締役専務執行役員 グローバル・ビジネス・サービス事業本部長 山口明夫氏
日本IBMは10月4日、企業全体での戦略的かつ効率的なAI(人工知能)活用を支援するサービス/ツール群「IBM Services AI Enterprise Knowlegde Foundation」を発表。同日から提供を始めている。
IBM Services AI Enterprise Knowlegde Foundationは、AI活用の戦略策定から導入支援、人材育成までをまとめたサービス群と、システム構築・運用の品質向上や効率化を支援するツール群で構成される。「AIを企業全体として戦略的に展開・管理することが新たな課題となっている」(取締役専務執行役員 グローバル・ビジネス・サービス事業本部長 山口明夫氏)とし、日本IBMでは、AIのシステム開発から継続学習までの一連のサイクルをサポートし、公平性と透明性を担保しながら業務の効率化を支援するという。
サービス群は、(1)AIマネジメント支援、(2)AIガバナンス支援、(3)AIプロジェクト導入支援、(4)AI運用・再学習支援、(5)AI人材育成・スキル移管支援――の5つ。(1)では、AI活用のための戦略策定、ロードマップの作成や管理、投資対効果のモニタリングなどを行う。(2)は管理プロセスの定義と実行、訓練データ・モデル・アルゴリズム・検討データといったAI資産の管理を行う。
(3)は新規プロジェクトを推進するためのユースケースの定義や技術検証支援、本番導入支援を実施。(4)では、既存プロジェクトを対象にKPIダッシュボードの構築と運用、品質向上のための再学習を実施する。(5)は、データサイエンティストの育成支援や、AIシステムに関するスキルを提供する。また、AIの全社展開を図るための横断的な組織(Center of Competency:COC)の設立も支援する。
IBM Services AI Enterprise Knowlegde Foundationのサービス群
日本IBMでは、AIシステムに関する資産を統合的に管理して再利用を可能にするツール群を整備。今回はその第1弾として、AIによる意思決定のバイアスを検出・軽減するソフトウェア「「Trust and Transparency capabilities」」を9月20日に提供開始している。
Trust and Transparency capabilitiesは、AIシステムの実行時にモデルの公正性を自動で評価し、意思決定のバイアスを検出すると、バイアス軽減のためモデルに追加すべきデータを提案する。IBM Watson、TensorFlow、SparkML、AWS SageMaker、AzureMLなどの機械学習フレームワーク上で構築されたモデルに対応する。IBM Cloud上で実行され、利用にはIBM Cloudライト・アカウントが必要。
IBMビジネス・バリュー・インスティチュートが発表した「AI 2018 レポート」によると、82%の企業がAIの導入を検討しているものの、60%は責任問題を危惧している。また、63%はAIを管理するための人材が社内にいないという。「全社での戦略的なAI活用に向けては、AI導入に特有の課題に対する仕組み・態勢を整える必要がある」(山口氏)