数年単位でさかのぼってデータを復旧--ZertoがITレジリエンスの戦略を説明

百瀬崇

2018-11-02 12:10

Zerto 製品担当シニアバイスプレジデントのRob Strechay氏
Zerto 製品担当シニアバイスプレジデントのRob Strechay氏

 Zerto Japanは11月1日、米国とイスラエルに本部を置くZertoの製品担当シニアバイスプレジデントであるRob Strechay氏の来日に合わせ記者発表会を開催、9月5日にリリースしたITレジリエンス(回復力)プラットフォーム製品「Zerto Virtual Replication 6.5(Zerto 6.5)」について説明した。

 Strechay氏は、まず世界中で起きているデジタル変革について言及し、「デジタル変革が起きるのは収益性や顧客満足度を向上させたり、いち早く製品やサービスを市場に投入したりするためだ」とし、デジタル変革の要素として、24時間のITシステムの稼動とITシステムの最新化、クラウド化が欠かせないと話した。他方、災害やサイバー攻撃といった計画外の混乱だけでなく、合併・買収や拠点の移動など、計画された混乱が生じることもあると指摘した。

 こうした背景から同氏はITレジリエンスが必要とされ、バックアップとハイブリッドクラウド、 ディザスタリカバリ・レプリケーションの3つがその柱になると語り、「それらの中核となるのがITレジリエンスプラットフォームだ」と強調する。

ITレジリエンスプラットフォームのイメージ
ITレジリエンスプラットフォームのイメージ
ITレジリエンスプラットフォームは複数の機能を搭載した“簡潔なIT”という
ITレジリエンスプラットフォームは複数の機能を搭載した“簡潔なIT”という

 同氏は、ZertoのITレジリエンスプラットフォームが、バックアップやレプリケーション、オーケストラレーション、マイグレーションといった個別導入では高価かつ複雑になる機能を全て搭載した“簡潔なIT”だとする。2月に「Zerto Virtual Replication 6.0」の提供を開始、マルチクラウドとハイブリッドクラウドに対応したITレジリエンスプラットフォームであり、「1つのプラットフォームに統括したものとしては世界初」(Strechay氏)という。自社のデータセンターにあるITシステムを、Microsoft AzureやAmazon Wen Services(AWS)、IBM Cloudなどのパブリッククラウドやプライベートクラウドへ移行できるだけでなく、クラウド間でも移行できるのが特徴となる。

マルチクラウドとハイブリッドクラウドに対応する
マルチクラウドとハイブリッドクラウドに対応する

 9月にZerto 6.5をリリースし、4つの機能強化を図った。1つはクラウドの加速化(Accelerate Cloud)で、ZertoのITレジリエンスプラットフォームを取り扱うクラウドサービスプロバイダーやマネージドサービスプロバイダーが利用できるクラウドコントロールポータルを拡張し、エンドユーザーにより良いサービスを提供できるようにした。「SaaSに基づくアナリティクスもサービスプロバイダーやエンドユーザーに提供している」とStrechay氏は話す。

「Zerto 6.5」における主な4つの機能強化点
「Zerto 6.5」における主な4つの機能強化点

 また、Microsoftの「Microsoft Azure Premium SSD Managed Disks」との連携も可能にした。これは、クラウド上でフラッシュSSDのストレージを必要とするアプリケーションを持つエンドユーザーにとって重要なポイントだという。さらに、RPO(目標復旧時点)とRTO(目標復旧時間)も向上させた。

 2つめはバックアップの基盤(Foundation Backup)の整備で、以前から備えるスケーラビリティバックアップサービスに加え、スケールアウトバックアップサービスも利用できるようにした。書き込みに関しては増分バックアップ機能も提供する。また継続的なジャーナルファイルレベルリカバリを強化しており、Linuxにも対応した。

 3つめは分析能力の強化(Deeper Analytics)であり、より深く幅広い分析ができる機能を追加。その1つに、90日間分の履歴データ分析機能を備える。これまでさまざまなAPIも追加しており、Zerto 6.5では、オープンソースソフトウェアの「Swagger」も加えたほか、ユーザーエクスペリエンスの点も強化している。

 4つめはプラットフォームの改善(Platform Enhancement)。例えば、Zertoの独自機能「バーチャルプロテクショングループ(VPG)」では、複数の仮想マシン(VM)にまたがってアプリケーション整合性グループを作成する。だが、リカバリさせたいのがVPGの中の1つのVMだけという場合に、Zerto 6.5では単一のVMだけをリカバリできる機能を追加した。また、スクリプトを書くときやDevOpsで利用するときのためにREST APIも改善し続けているという。

 Strechay氏は、今後のバックアップのソリューションの観点として、提供済みのジャーナルベースのプロテクション(Continuous Journal-Based Protection)にも言及。「例えば、午後5時半ごろにランサムウェアの攻撃を受けた場合、従来は午後12時半ごろのスナップショットにまで戻らなければならなかった。Zertoはスナップショットを使っていないため、ランサムウェア攻撃を受けてもその数分前もしくは秒単位にさかのぼれる。それによってエンドユーザーはデータの損失を減らすことが可能になる」と説明した。

 同氏は、継続的なジャーナルベースのプロテクションが、今後のITレジリエンスプラットフォームのあるべき姿だと確信しているともいう。「この機能を活用してより長期的にデータを保護できないか、データを復旧できないかと考えた。Zerto 6.5では、データを復旧する場合に秒単位や分単位、時間単位、日単位でさかのぼれるが、今後リリースを予定する『Zerto 7.0』ではElastic Journal(エラスティックジャーナル)機能を搭載し、月単位や四半期単位、数年単位でさかのぼれるようにもなる」(Strechay氏)

「Zerto 7.0」ではElastic Journal(エラスティックジャーナル)機能が搭載され、月単位や四半期単位、数年単位でさかのぼれるようにするという
「Zerto 7.0」ではElastic Journal(エラスティックジャーナル)機能が搭載され、月単位や四半期単位、数年単位でさかのぼれるようにするという

 Zerto 7.0では、この他に新機能を実装することで、バックアップサービスやメディアエージェント・サービス、追加バックアップソフトウェア、バックアップウィンドウなどが不要となり、ユーザーに利益をもたらすと、同氏は強調。最後に、「Zertoがハードウェアを提供することはないが、エンドユーザーの多くは既にハードウェアを導入している。当社はそれらのハードウェアに対応するソフトウェアを提供していくし、ZertoのITレジリエンスプラットフォームはクラウド化した後も利用し続けられる」と語った。

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