大手銀行からも引き合い--行動科学も学んだAI活用する“HRテック”の勘所

阿久津良和

2019-01-17 07:00

 人材育成などを手掛けるICMG(千代田区)は1月16日、シンガポールのMercuricsが開発する「Mercurics AI」エンジンを活用した「タレント特性モデリング・サービス」と「タレント離職リスク分析」を発表した。Mercuricsはシンガポールの政府機関である科学技術研究庁(Agency of Science, Technology and Research:A*STAR)からスピンアウトした企業。

 「タレント特性モデリング・サービス」は簡易設問の回答結果を心理学や行動科学を学習した人工知能(AI)で分析することで採用候補者の行動特性を分析、予測し、当該企業が求める人材モデルの適合度を判定する採用ソリューション。「タレント離職リスク分析」は簡易設問やストレスチェックテストと各種既存のデータを活用したAIを用いることで、離職リスクを分析、予測して人材のリテンション率を向上させる要因を進言する。

ICMG エグゼクティブアドバイザー 若林豊氏
ICMG エグゼクティブアドバイザー 若林豊氏

 現在、日立製作所グループで試験導入を実施中。さらなる最適化を経て、4月1日から提供する。詳細価格は未定だが、ICMGは初期導入費用として50万円程度、利用者1人あたり年間2000~3000円のサブスクリプションモデルを予定。また、導入時は企業側の用途に応じて最適化が必要になるが、その際の開発費は別途発生する。

 ICMG エグゼクティブアドバイザー 若林豊氏は今回のサービスのターゲットとして、「変化を必要としつつも多様性を持った人材の管理ノウハウを持たない企業」と説明しつつ、「日本市場をリードしてきたが、人材構成を変えて新たなビジネスに挑戦しなければならない企業の人事管理支援を目指したい」(若林氏)と保守的な企業の変革を鼓舞した。

 従来のAIはビッグデータに代表される大量のデータを使用し、関連性を分析する機械学習や深層学習に至るが、Mercuricsは一連の流れを「ブラックボックスアプローチ」と称している。若林氏は「『風が吹けば桶屋が儲かる』の関係を見つけ出すのがAIだが、多くの場合は関係性が不明確」という。

 その上でMercurics AIは100以上の心理学や行動科学のモデルを学習させ、「アクチュアルHRビリーフモデル」を構築した。さらに各種データの学習と最適化を経て、深い心理学的洞察が得られるとICMGは説明する。

 「従来のHRテック系AIは人事部や経理部など各所に散らばるデータをまとめ上げる必要があり、運用までに時間を要したが、(Mercurics AIなら)明日から始められる。ただし、データは日本人(の文化やメンタリティ)に限定していないため、一定のチューニングは必要。それでも4~5年はショートカットできる」(若林氏)

Mercurics AIの使用例
Mercurics AIの使用例

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