1つは、IBMがカナダのCognosを、SAPがフランスのBusinessObjects(BO)を相次いで買収したことだ。CognosとBOは当時、BIソフト市場でトップシェアを競っていた専業ベンダーだった。IBMやSAPといったビッグネームがそうしたベンダーを買収したことで、BIへの関心が一気に高まっていったのである。
もう1つは、前述の話で言うセルフBIの登場である。手元に残っている取材メモから、当時の動きについて記しておく。
――それまでのBIは、どちらかと言えば経営者の意思決定を支援するものとして捉えられていた。BIソフトを提供してきたベンダーも専業が大半で、経営者の意思決定支援機能の高度化を競ってきたことから、比較的高価な製品が多く、それが市場の広がりを妨げる要因ともなっていた。
それに対し、ここにきてそんなBIのあり方を見直す気運が盛り上がってきた。軸となっているのは、企業のビジネスにおいて意思決定を行うのは経営者だけではない、という捉え方だ。例えば中間管理職者は、自らが率いる部門で業務効率を最大化するために、さまざまな局面で意思決定を行わなければならないケースが多々ある。
さらに一般社員でも、企業の戦略に基づいて、日々の業務の中で自らの作業効率を最大化するための意思決定を図っていく必要がある。とくに日々顧客と接する営業マンなどは、顧客の要望に応じてその場その場で判断しなければ、せっかくのビジネスチャンスを逃しかねない。その意味では、むしろ営業マンをはじめとした一般社員こそが、日々の収益獲得活動の中で最もスピーディーな意思決定を迫られているのだという考え方である。――
少々回想が長くなってしまったが、当時のBI分野の動きを受けて、上記のような主張を繰り返して書いた記憶がある。
ちなみに、当時セルフBIのようなイメージで登場して注目されたのは、ベンチャーの製品ではなく、Microsoftの「Officeシリーズ」としてラインナップされたソフトだった。それが今の「Power BI」につながっている。
今回のIBM Cognos Analytics最新版は人工知能(AI)技術を駆使して、BIの機能を大きく引き上げたという。競合製品も追随して、この市場はますます激戦区になるだろう。そうした中で、筆者の10年越しの主張も実現していくことを切に期待している。