Accentureによれば、企業ではピープルアナリティクスや従業員に関するデータの活用が一般的になってきているが、そこには落とし穴もあるという。従業員は勤務状況に関するデータの収集を受け入れているが、警戒もしている。
同社は、ダボスで開催されている2019年の世界経済フォーラムに合わせて調査レポートを公開した。この調査では、テクノロジを利用して従業員のデータを分析しているのは企業の62%に上るが、十分な責任を持って分析を行っていると確信している企業役員は、30%しかいないことが明らかになった。この調査は、日本を含む13カ国、13業種の企業で働く1万人の従業員と1400人の企業幹部を対象としている。
従業員の92%は自分自身や自分の勤務状況に関するデータ収集を受け入れているが、同時にそれに対する見返りを求めている。特に求められているのは、生産性の向上や健康管理などだった。
また従業員の64%は、最大の懸念事項としてデータの乱用を挙げている。Accentureによれば、従業員の70%は雇用企業のデータの利用方法を自らコントロールしたいと考えており、73%は退職時のデータのポータビリティを求めている。これに対し、退職時に勤務状況に関するデータを引き渡すことを受け入れている企業幹部は半数強(56%)だった。
レポートでは、金銭的なメリット・デメリットについても評価している。従業員のデータをうまく利用できれば、企業の将来的な売上高は最大で6.4%伸びる可能性がある。その一方で、企業が従業員のデータを利用する際に問題を起こし、従業員からの信頼を失えば、将来的な売上高が最大で6.1%減少する可能性もあるという。Accentureは、この最大で12.5%の振れ幅は、企業幹部の注意を引はずだと述べている。
問題は、ビジネスリーダーの31%が、従業員の懸念が従業員のデータに対する投資の妨げになっていると回答していることだ。また32%は、すでに従業員のデータの利用に投資しており、問題には実際に発生してから対応すると答えている。
従業員のデータやピープルアナリティクスの利用にリスクがあるとすれば、なぜ企業はこの領域に多額の投資を行うのだろうか。レポートでは、次のような調査結果が示されている。
- 企業の77%は、従業員のデータは企業の成長に役立つと回答している。
- 76%は、機動力と効率の向上を投資理由として挙げている。
- 企業の幹部は、一般に適切な人材に適切な役割を与えたいと考えている。
Accentureはこのレポートで、信頼の醸成、プライバシー機能の開発、企業と従業員の協力による芸術や人文科学の観点も取り入れたシステムの構築、バイアスの低減、AIを利用した機会の拡大などの論点を含む、従業員データの収集と管理に関わるフレームワークを提示している。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。