人材を獲得することと人材を幸福な状態に保つことは、まったく別の話だ。昇進や給与の増額が従業員のやる気の維持に役立つことは確かだが、ITプロフェッショナルの多くは、自分の仕事に充実感を感じられなければすぐに飽きてしまう。
熟練したITプロフェッショナルに対する需要がこれまでになく高まっていることを考えれば、企業は優れた人材を会社に引き留めておけるよう、全力を尽くす必要がある。離職率が高くなれば、企業にとっては大きなダメージになる。プロジェクトが必要とするときに専門知識をもった人材が去ることもあるだろうし、従業員の士気にも関わる。
では最高情報責任者(CIO)は、どうすれば従業員の幸福とやる気を維持できるのだろうか。この記事では、何人かの専門家から、スタッフのやる気を維持するためのベストプラクティスについて話を聞いた。
1.変化の利点について議論する
Parkinson's UKのデジタル変革およびコミュニケーション担当ディレクターJulie Dodd氏は、スタッフのやる気を維持するにはどうすればいいかという問題に「魔法の答え」はないと認めている。Parkinson's UKは、パーキンソン病の新たな治療法を模索し、患者を支援することを目的とした英国の慈善団体だ。同氏は、「これは特に、金銭的な報酬に頼れない慈善団体にとっては大きな課題だ」と話す。
Dodd氏は、(Parkinson's UKのように)デジタル化を推進しようとしている組織では、継続的な改善と前向きな変化を推進しようという意識を持ったIT部門を維持していく必要があると述べている。そのようなアプローチには「変革疲れ」が起きてしまうリスクがあるが、同氏は、その問題は正しい戦略を取れば克服できると主張する。
「私が思うに、スタッフを速いペースの変化についてこさせることができた場面では、普段のコミュニケーションが重要な役割を果たした。特に、パーキンソン病の影響を受けている人々に、最終的にどんなメリットがあるかについてのコミュニケーションが重要だった」とDodd氏は言う。「ただ、自分たちの仕事がどんな影響を及ぼせるかを示すことは重要だが、変化の究極的な目的が株主の利益である営利企業でも同じことができるのかはよく分からない」
Parkinson's UKの場合、組織内のコミュニケーションチームが重要な役割を果たしているという。このチームは、組織内で進んでいる興味深い変革プロジェクトについてのブログ記事や動画を投稿することで、組織全体のスタッフのやる気を盛り上げてきた。このプロセスには、最高経営責任者(CEO)や、Dodd氏自身も含めた経営チームからの定期的な最新情報の提供も含まれていた。