企業の役員に今流行している人工知能(AI)の可能性について語らせることと、自社の事業で具体的にどう利用していくかを説明させることは、多くの場合まったく別のことだ。
しかし、英国のパーキンソン病患者支援慈善団体Parkinson's UKのデジタル変革およびコミュニケーション担当ディレクターJulie Dodd氏は、AIが研究やサービス提供をどう変えるかを語れるだけでなく、新技術で患者の人生を変えるようなメリットを生み出している同組織において、AIを実際にどう利用しているかについても具体的に議論できる人材だ。
Dodd氏はまず、人工知能の開発と応用を専門とする企業BenevolentAIとのパートナーシップについて語った。Parkinson's UKは、機械学習プラットフォームを利用して、パーキンソン病の症状を治療できる可能性のある薬を発見しようとしている。同組織はAssociation of Medical Research Charitiesが開催したコンペでこのパートナーシップを獲得した。

Dodd氏
提供:Parkinson's UK
このコンペでは、BenevolentAIの技術によって、具体的にどのような研究課題を解決できるかを示すことを求められた。Parkinson's UKは、The Cure Parkinson's Trustと協力し、BenevolentAIの技術を使って新たな治療法を発見しようとしている。同組織が設定している野心的な目標には、現在入手可能でパーキンソン病の治療に転用できる薬を3つ以上発見することと、この病気のまったく新たな治療法を2つ以上発見することが含まれている。
BenevolentAIのプラットフォームでは、臨床研究データや発表済みの研究を徹底的に調査している。数百万件のデータを調べて、その中から人間には発見できないかもしれない知見を探しているのだ。例えば失敗に終わった試験のデータには、プラスに解釈できる指標があるかもしれない。このAIプラットフォームは、将来利点が見いだされる可能性がある薬、分子、パスウェイを発見する能力を持っている。
Dodd氏は、「研究者が数年かかって行うような研究を、数週間で行うことができる」と話す。「従来の手法よりも早く治験を終えられる治験薬の候補を見つけられれば、デジタル変革によって、パーキンソン病患者に大きな影響をもたらせるようになる」
Dodd氏はまた、Parkinson's UKの相談サービスに関するデータ主導のデジタル変革の取り組みについても語った。その狙いは、情報を活用することでリソースをより効果的に利用できるようにすることだ。同氏は、この技術を活用することで、現在の人材リソースで連絡できる人の数を2倍にすることができると見積もっている。